「万人にお薦めできるあたたかい映画」幕が上がる しぐさんの映画レビュー(感想・評価)
万人にお薦めできるあたたかい映画
私が初めて、映画館という公共の場において人目も憚らず嗚咽した映画が、本広克行監督の「サトラレ」でした。
そしてまた、本広克行監督の作品に嗚咽させられたのです。
本広監督作品にはつきもののコミカルな場面も健在で、地方女子校の演劇部
ろくに青春というものに触れることなく、気づけばもう40近い齢になってしまいましたが、「青春」とは「生きるということ」だと気付かされました。
私はももクロのファンですから、この映画に対する印象としてどうしてもももクロ側からのアプローチが入ります。
小道具や演出、ストーリーの一部さえもももクロと被ってしまい、それはそれでこの映画の「見方」のひとつであるには違いないのですが、正直ももクロを知らない人が羨ましい。
私も「原作平田オリザ、脚本喜安浩平、監督本広克行の青春ド真ん中映画」として観てみたかった。
本広監督は「この映画をアイドル映画だと言って敬遠されるのが悔しい」とおっしゃっています。
アイドルをキャスティングしておいてそれは、と感じる人もいらっしゃると思いますが、本当に先入観無しに観てほしい。
壮大なCGや驚愕のどんでん返しも無い。ヒーローが出てきて勧善懲悪という展開もない。
地方の高校生が演劇に打ち込む姿を切り取ったものです。
しかしだからこそリアリティの中に繊細な心の動きを見いだし、共感する部分が多くあるのではないかと考えます。
そして観終わったあとの爽やかな気持ちは、こうありたかったという願望や郷愁感も入り混じる切なさにも似ていました。
善も悪もない。破壊も暴力もないからこそ、老若男女、多くの人に愛されてほしい作品です。
最後スタッフロールをバックに流れる映画主題歌「青春賦」の歌詞が刺さりすぎて涙がとまりませんでした。