現在、第二子を妊娠中。最近すっかり付き合いのよくなった、第一子をお供に鑑賞しました。自分も授かり婚ということもあり(年齢はかなり上ですが…)、予告を観て気になった作品です。
正直、共感できるとするか、いただけないと切り捨てるか、一晩つらつら考えてもすっきり定まりませんでした。…むしろ、それがある意味、この作品の愛すべき持ち味なのかも、と感じています。
妊婦目線で言うと、いくらなんでも緑がいつまでもスレンダー過ぎるし、終盤までミニスカートを履いているのはちょっとどうかなと思いました。
うーん、リアル、と思ったのは、真生の緑への接し方。私事に戻りますが、第一子妊娠時に比べ、びっくりする(気力がなくなる)ほど、夫が冷たいというか、クール。おいおい、もっと妊婦を大事にしろよ、と言いたくなりましたが、いかんせん体調不良の波が続く妊娠初期。情緒不安定を悪化させるばかりで、グッドとは言い難いストライプスが続いていました。
そんな折、もやもやを上司にグチったところ、「それは仕方ないですね。そもそも、男は妊婦が苦手というか、嫌いです。見た目悪いし、近寄ると八つ当たりされるし、自分への気遣いはゼロになるし、動物的だし。だいたい、生物学的に、妊婦に恋愛感情を抱いても無意味ですよね。」「夫としては、第一子みたいに浮かれていられないという気持ちとか、結局は産めない男はカヤの外、という気持ちがあるんですよね。」…とあっさり言われ、その説得力に思わず脱力、唖然としてしまいました。
そうなんです、きっと、男性は妊婦が苦手なんです。そう正面切って言える状況は、今どき皆無ですが…。
と、感服しすぎて沈黙していたら、上司はショックのせいと誤解したらしく、「とはいえ、苦手・面倒だからと言って切り捨てられない。やっぱり大切な存在、愛おしいという気持ちはあります。」「おもしろくないこと満載ながら、大きく逸脱する度胸も持てないままに、妻の妊娠期間をやり過ごすのが大抵です。そして怒涛の出産、育児に突入していけば、否応なしに夫婦の連帯感は強まりますよ。」と言い添えていました。これもまた、ふむふむでした。
そんなことを踏まえると、真生のぼさっとした言動が、とても納得がいきます。緑への気遣いゼロ(三つ子の魂…で、荷物だけは持ってあげるけれど。)なところ、子どものようにいじけるところ、昔の同級生にクラッとしておきながら…なところ。などなど。
タイトルが示すとおり、人はそう容易く変わるわけではなく、無理に折り合う必要はないじゃないか、というところがこの物語の肝。音楽もほとんどなく、淡々と進みますが、この監督さん(お名前は何とお読みするのか…せめてチラシやポスターには、振りがなをつけてもよいのでは?)、お若いのに「間合い」がとても上手いなと感じました。重すぎず、軽すぎず。ちょっとくすぐられるような絶妙の加減です。とはいえ、時の流れや関わりを重ねる中で、それぞれに少しずつ変化はある。そんな過程も丁寧に拾っています。中でも、側溝に落下した緑が、真生を逆に励ますシーンや、父から式への欠席を告げられた真央に微笑むシーンは、自由奔放なだけじゃない、今どき女子のどっしり感が出ていて、心あたたまりました。
脇も個性豊か。いけすかない真生の友人たちや、影が薄いままの緑の父母など、いただけない・物足りないところは幾つかありますが、その一方で愛すべき面々も。個人的には、小憎らしいのにどこか愛敬がある、緑の姉がとてもよかったです! プラス、亀と犬も、見かけ以上にいい味を出していました。 (犬はさておき、亀が映画界でブームの兆しなのか⁈)
それからそれから。最後の式のシーンは、新鋭監督応援!を感じさせる豪華エキストラで楽しかったです。特に、すでに酒が入った感のある陽気な親戚のおじさん風(いかにもいそう!)の篠原哲雄監督が最高でした。加えて、緑の姉は大はしゃぎ、店の同僚は落ち込んでいたり(気があったのか…)など、芸の細かさを感じ、心地よい余韻を味わえました。
出産まで引っ張らない、潔い幕切れも好みです。