「原題は「聖ヴィンセント」」ヴィンセントが教えてくれたこと aoiさんの映画レビュー(感想・評価)
原題は「聖ヴィンセント」
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身近な聖人を探すこと。それが、学校の宿題。
聖人とは、他人に尽くし、徳を積んだ人のこと。
聖人は、別に奇跡を起こして、水の上を歩かなくてもいい。
あなたの身の回りにいる、聖人は誰か。
ある日、ヴィンセントが子守をする少年に、そういう宿題が出るのだが、それはあくまで、映画の背景に過ぎない。
ヴィンセントという老人のダメな生活が、映画の主軸。
確かにダメな生活なのだが、言葉の端々、病後や宿題のインタビューで明白になるように、
いつも常に、彼は、人に嫌われていない。
寒山拾得図のように、文殊菩薩や普賢菩薩が、小汚い格好をして、町の片隅で暮らしているという思想がある。
誠実に暮らしていれば、心が弱ってしまい、馬鹿なことをしてしまったり、虚勢を張っていても、
人が助けてくれて、人が愛してくれる。
そういう、フーテンの寅さんは推奨されないが存在は許される、くらいの社会の緊張度合が、きっと誰しもが生きられるセーフティネットのある社会。
渡る世間に鬼はない。
不合理な人生を、賛歌する映画。
見ている人は、いつも、ヴィンセントの善さを見ていたという後半も温かい。
富裕層じゃないアメリカの話を描くところも良かったと思う。
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