「主演は主人公にあらず、の映画でした。」ヴィンセントが教えてくれたこと お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
主演は主人公にあらず、の映画でした。
ワルのオヤジ、といっても悪党というわけではなく、酒とギャンブルで身を持ち崩してしまって一文ナシの、そう、いわばダメオヤジが主役の映画。彼が、隣家に引越ししてきた母子家庭の男の子を引き受けるというお話です。
最初のうち、一瞬、これは「カラテキッド」か、とも思いますが、子供を鍛えるシーンはごくわずか、したがってなぜこの子供が学校のワル連中と五分の友達になれたかという点について、ほとんど謎のままで話はどんどん進行してしまいます。
もっとも、早い話、この映画の主人公はこの子供なんですけどね。
どんな人でも、悪い部分、暗い部分に目をつぶり、光があたっている面だけを見るように心掛けている少年の人生観こそがストーリーのキモです。
そのような少年に出会ってしまったダメオヤジも、自分の良い面にだけ光を当ててくれる少年の出現のおかげで、ハッピーエンドを迎えます。
ま、それだけの話なんですが、隣近所で泣いている観客が何名もおいでになっていて、つまり誰かに自分を投影できれば楽しめる映画なんだろうなと思います。
私は、投影する相手がおらず、従って冷静に映画を観察してしまい、冷えてしまったわけですが。
安娼婦役のナオミ・ワッツの芸の幅の広いことには驚きました。
ダイアナ妃から安娼婦まで演じられる名女優の、次回作にも期待したいと思います。
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