「オリバーが助けてくれたこと。」ヴィンセントが教えてくれたこと ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
オリバーが助けてくれたこと。
クソ親父というより飄々としたダメ親父が似合うB・マーレイ。
どこか掴みどころのない態度が絶妙でこれは昔から変わらない。
今作では彼の持ち味を生かしつつ、少年との心温まる?物語に
仕上げようとしているが…まぁそんな一筋縄で治めるもんか、
と云わんばかりに成長しない人間(悲しいヒト)を巧みに演じる。
観終えて誰もが思うことだけど、え?ヴィンセントってなにか
教えてくれたっけ?^^;なのである。オリバー少年が、もちろん
学内発表の中で彼の人となりがなぜ聖人に相応しいのかを説明
してはくれるけど…そう云われても大して変わってないしな^^;
おそらく少年の目から見て、本当に人間らしい人間なのである。
まるで世捨て人のような生き方をしていることに、中盤までは
観客も反感を覚えるが、それがどこからきている行動なのかを
知ると途端に切なくなってくる。いや、切なくなったといって
彼を好きになることはないが…ダメ親父の悲哀に通じるのだ。
寄りそう少年を撥ね退け、その母親に悪態をつき、どこまでも
嫌われる方向に走り出す親父を、なぜか知らないけど周囲は
放っておかない。ストリッパー兼家政婦のN・ワッツの怪演も
お見事で、妙にロシア人に為りきっているのがなぜか魅力的。
アチラで大人気のM・マッカーシーがお母さんなの?と思って
観ていたら、オリバーは実は養子だったということも分かる。
結局のところ離婚して引っ越して親権を守るためせっせと身を
粉にして働いている母親に、いじめられたぐらいで相談なんか
できない可哀想なオリバーなのだ。そこで親父の奥の手が炸裂。
ヒトから金銭を巻き上げてはギャンブルで一攫千金を狙う男で
あっても「決して他人からの頼みを断らないところが聖人だ」と
オリバーが言うように、妊婦のストリッパーも、面倒な子守も、
彼は投げ出していない。その人間らしい優しさに気付く少年の
心が実は親父を助けてくれていたんだよ、なんて思うのだった。
(いじめっ子を助けてやったオリバーは偉かった。本当いい子ね)