劇場公開日 2015年4月25日

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「これで伝わるよね?はい十分だと思います」Mommy マミー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これで伝わるよね?はい十分だと思います

2024年2月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

架空の法案の説明から始まり、およそ善良とは言えないような母子の姿から物語は動き出す。
息子スティーブは間違いなく問題児だし、母ダイアンは言葉も態度も少々悪い、問題ある人物に思える。
しかし観ていくうちに二人とも違った一面を見せ始める。特にダイアンは、良くあろう、良い人間であろうと努めている事に気付きはじめ、そして、二人はとても愛のある親子に見えてくる。いや、実際に愛に溢れた親子なのだ。
今を取り巻く状況はよくないかもしれない。悲劇的な状況かもしれない。それでも今より良い未来を掴める気がしてくるし、今の二人だって、裕福で不自由ない生活とは程遠いけど、不幸かと問われれば、いいや、幸せそうに見えると答えるだろう。

イケメン監督のグザヴィエ・ドランは幸せに見える母子を画面サイズと隣人カイラで演出した。
カイラは映画を観ている私たちの視点キャラクターで、その彼女の態度と言葉の変化が私たちの気持ちを誘導する。この二人をどんな気持ちで見守ればいいのか、どう感じればいいのかを。
もう一つの画面サイズは、左右を切って画面を狭くすることで、余計な情報をシャットダウンし、より人物にフォーカスできるようにした。
カメラが凄く近いシーンも多く、つまり、画面一杯に人物が映ることで、その人の中身まで見えてくるような撮り方は神がかってると思ったね。

複雑でじんわりする感動が襲うなか、冒頭の法案が暗い影として不幸な未来を想像させ続ける。
甘いと酸っぱいの相乗効果のような、絶妙に絡み合った感情の渦は、ドランの天才性を確信させた。単なるイケメンじゃねーぞと。
ただでさえ力強いショットとカットの連続で溺れそうなのに、画面サイズが広かった瞬間の感情の高まりは驚くほどだったしね。

物語を動かすようなセリフは余り書かないイケメン脚本家ドランだけど、今回は印象的なセリフが二つあったね。
「過去はクソ!未来をわしづかめ」と「世の中に希望はわずかしかない」だ。
どちらも甘いと酸っぱいの渦の中に内在している真理のように作品内に取り込まれていて、ストーリーテラーとしてのイケメン・ドランの才能も感じたよね。

共感できないとか自業自得的なレビューの人がチラホラいるけど、この作品は共感するようなタイプの作品じゃないと思うんだよね。
イケメンドランは自分の一部を作品に取り込むことと映画観を語っている。
ダイアンのラストカットで、耐える母、強い母、愛してくれた母、愛すべき母の姿を写し出した。
自身も母と子だけだったイケメンの、母への感謝と愛情表現だったと思うのね。
幸せそうな他人のホームビデオに愛情を感じれば温かな気持ちになるでしょ。それと同じだよ。
画面には写っていないイケメンの深い愛を感じるべし。

ただ、愛情表現が濃すぎて、自分がドランの母親だったら息子が死ぬ気なんじゃないかと心配になるけどね。

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つとみ