独裁者と小さな孫のレビュー・感想・評価
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見事に「過不足」のない作品
「独裁者と小さな孫」素晴らしかった。
どんなジャンルの映画でも共通する「良い映画の条件」は「過不足のないこと」。
ここ何年かの映画の中では「メランコリア」「二つ目の窓」「シンプル・シモン」「妻への家路」と並んで、その塩梅が見事だった。
「独裁国家」の国民のさまざまな本音や歪みが複層的に描かれている。それは分厚いミルクレープのように無数の層を形作る。そしてその層の一枚一枚がデコボコしていて、重なったそれらを俯瞰すると無数のグラデーションが現れて、その「まだら」はいろんな問いを浮かび上がらせる。
けれど創り手は主張も答えも提示せず、材料だけを最高の状態でこちらに預けてくれる。
創り手と作品を共有しているような感覚。それを感じられる作品はそうはない。
そんな稀有な作品を最高の環境で観られたことに感謝。
過去は消せぬが
みなさん書かれているように、とりあえず、孫が可愛い。
泣いたり、踊ったり、発言がとにかく子供らしく無垢で、可愛らしい!
大統領はというと、孫のせいかそんな悪い人間に見えなかった(コレこそがこの作品の落とし穴だろう)が、昔は独裁政治で国民みんなから恨まれてますねー。
自分が作り上げた世界で逃げ回る大統領でしたが、その逃走劇の中で国民の現実を知り、色々もやもやしており、最後にはあまり抵抗をしなかったように見えた。
僕がこの作品で感じたのは、どんなに逃げ回って改心しても、起こってしまった事は変わらない、罪は消えない。人間は優雅に生きようが貧しく生きようが、喜び・悲しみ・恨みなどは過去にしか置いていけないし、今を生きるのにも過去というのは足かせになってしまう…と、いうコトか。
当事者しか解らないことかもしれない…
ストーリーは興味深いけど演出が…正直コントかと…
それぞれのエピソードが断片的でもんもんとしてたら
ラストにかけて監督の伝えたい事をセリフで伝えられます
いや、それ言わしたらあかんやろw物語で伝えてよw
圧政を経験した監督だから直接的になったのかな
孫が可愛いかったのと大統領の演技が良かったので2時間保ちました
意外に、毒が。
孫連れたじいさんの、ファンタジー映画と思いきや、かなりの毒の含有量。「人間は、退化している。」トラウマになりそうな、セリフが、潜伏しています。民主化の名の元に、多くの血が流れる現代。そんな歪んだ世界を癒すのは、赦しなのか、復讐なのか?。どちらを選ぶかは、映画館を出てから、考えるとしましょう。
地味だけど観やすい
架空の国の権力を世襲している独裁者の大統領がクーデターに会い、6歳くらいの孫と逃亡する中で色んな人に出会う。権力者を裏切る人、権力者に従うしかない人、反体制派の中の権力者、体制下では権力者を信奉していた体制側だったのにクーデター後は権力者を殺そうとする人、自分の味わった苦痛を権力者にも味あわせようという人、それでは本当の解決にならないという人…。大統領であったなら出会わなかった人達。そんな人達に会ったからといってコロッと人が良くなったりはしない。ただ、言葉少なな表情の中に、どこか何かを感じている風が見える気がした。
純粋な孫は宮殿での生活しか知らず、大統領の足手まといになりそうになるが、最後、祖父をじっと見つめる目が何とも言えない。
自らが作り出した地獄巡りへ、ようこそ
モフセン・マフマルバフ監督がジョージア(旧国名:グルジア)で撮った『独裁者と小さな孫』。
彼の持ち味は、少しすっとぼけたところ。
落語の世界でいうところの「フラ」といいうやつ。
真面目な題材であっても、どことなく滑稽味が感じられる作品が多いのが特徴。
独裁政権のとある国。
軍事クーデターで、一瞬のうちに政権は崩壊して、独裁者は幼い孫息子とともに旅芸人に化けて国中を逃げ回る破目になる。
そこで、ふたりが目にしたものは・・・というハナシ。
ひとことでいうと、自らがつくりだした地獄を経巡る話といえる。
はじめ、独裁者はその地獄に気づかず、最初に逃げ込んだ田舎の貧しい床屋では、床屋の主に対して「お前たちは税金を払わない」と憤っていたりする。
それが、転々と逃げるうちに、3か月も給料をもらっていない軍人たちや、さらには軍人に凌辱されてしまう花嫁などに出遭い、憤ってばかりもいられなくなってくる。
いわば、地獄の亡者のひとりと化していく、といっていいかもしれない。
たしかに、この地獄、はじめに作り出したのは独裁者そのひとなのだけれど、たぶん初めは理想の国だったのだろう。
それが、権力を恣(ほしいまま)にすることで煉獄となり、そして、クーデターにより、無秩序状態となって、真の地獄になってしまった。
独裁者と孫が巡るエピソードを視つづけていくと、あれまぁ、独裁時代のほうがまだ秩序があってマシだったのではないかしらん、とおもうほど。
観ているうちに思い出したのは、ナチス・ドイツ軍によって蹂躙される白ロシアの村を少年が巡っていく『炎628』。
ただし、あの映画ほどの恐ろしさはなく、独裁者と孫に次々と迫る危機も意外なほど、そっけなく切り抜けていくあたりも、それはマフマルバフ監督の持つ「フラ」によるものだろう。
そして、終盤、あっけらかんなほどにこの地獄を断ち切る方法が謳いあげられる。
それは「復讐の連鎖を断ち切るしかない」ということ。
復讐・報復は、復讐・報復しか生まず、秩序や正義などは生み出しはしない、と。
あぁ、そのとおり。
そのとおりです。
こんなにもストレートに謳いあげるとは!
ナイフとピストルによる復讐と報復が、映画的マジックによってパンと植木鉢に替わって、不思議な平和な幸福感をもたらした『パンと植木鉢』と比べるとなんとストレートなことか。
もう、マフマルバフ監督の映画的マジックも通じない世の中になってしまったということかもしれない。
もういちど、マフマルバフ監督の映画的マジックの通じる日が来てほしいものだと切に願う。
悪人に見えない独裁者!
ヨーロッパ映画らしい?淡々と話が進みます。逃走劇なのですが、悪人に見えないおじいちゃんと孫のロードムービー。
本当、悪人に見えないんですよね。甲斐甲斐しく孫の世話をやく、おじいちゃんなんですよ。変装のカツラしてると、むしろ、ロード・オブ・リングのガンダルフに見えます。意図した演出なのかな?
前半は、コメディタッチで、むしろ微笑ましい雰囲気。その雰囲気は、全て純真無垢な孫の愛らしさからくるもの。本当可愛い。
しかし、逃走中に見えてくる圧政に苦しんだ国民の生の声、クーデターによる無秩序が生んだ悲劇を目の当たりにしていくうちに独裁者の心境の変化が、孫との会話や、難民とのやりとりから伺いますが、しかし現状は、何も変わらず、逃げるしかなくて、ラストを曖昧にしてるのも、何となくわかります。助かったのか、殺されたのか?
話的には、淡々と進むせいか、後半だれます。政治犯に出会ってから、家にたどり着いての悲劇は、短くしても良かったように思います。
後、ラストの群衆の中に一人だけ独裁者の助命を訴える者が居ます。
途中で一緒になった政治犯の一人で、いきなり言い出すのでなく、そういった演出が途中にあるので、まあ良いんですが、個人の感想としては、そういう思想でそう言っているだけで、感情が伴っていないと言うか、
人は、そこまで割り切れるものかと、思想なんて激情に流されてしまうじゃないかと。
つたない文章で、分かりづらくて申し訳ないですが、しっくり来なかった部分です。
長々と書きましたが、良い作品であるのは間違いないので、観て損はしません。
可愛い孫へ注目しちゃうよね
この作品、紛れもなく悲劇のはずなんですが、どこかユーモラスでもあるんですね。
このあたり、監督の目線、登場人物を見つめる目に、温かみや人情味を感じるんですね。それで随分救われた気分がする作品です。
また、この作品、どこかですでに見たような「デジャブ」を感じるのですが……
独裁者、絶対的権力者がその地位を奪われ、逃避行を続けるお話。
そうです。
古くは、あのシェイクスピアの「リア王」
そして映画では「リア王」をモチーフとした、黒澤明監督作品「乱」がありました。
「乱」では城主とその家来、いや”人間未満”の存在である「道化」がお供をしましたね。
本作ではその道化の役割を、独裁者自身の幼い「孫」が担っている形なのです。
国内でクーデターが起こり、大統領夫人など、家族は飛行機で脱出します。
しかし、大統領はまだ事態が収集できると信じて自国に残ります。そのとき、偶然、孫が幼なじみの「マリアがいっしょじゃなきゃ、イヤだ~!!」と言って飛行機に乗り遅れてしまうのです。止むを得ず大統領は、孫と一緒に専用リムジンで宮殿に帰ろうとするのですが。
すでにクーデター勢力は、すぐ身近に迫っていました。身の危険を感じた大統領は、宮殿を捨て、専用リムジンを捨て、大統領の盛装も捨て、貧しい旅芸人に変装し、ギターを持ち、孫と二人で危険な逃避行を始めることになるのです……。
国内は体制派と反体制派が内乱を起こしている。国中が大混乱。ここで難民が発生します。
今、ヨーロッパでは、増え続ける難民が大変な問題となっていますね。この作品がヨーロッパでどのようなリアリティを持って受け止められたか、気になるところです。
さて、その難民の群れに紛れ込む大統領と孫。
幼い孫は無邪気に尋ねます。
「ねえ、どこへ行くの、大統領?」
「だまれ!! 二度と大統領というな!」
「どうして大統領って言っちゃダメなの、大統領?」
「見つかったら殺されるんだ!!」
難民たちと共に、時には歩き、時にはトラックに乗せてもらい、あてもなく移動を続ける大統領と孫。難民の中には
「アイツ(大統領)に兄弟を殺されたんだ」と問わず語りに話す者もいます。
数多くの政治犯を処刑せよ、と命じたのは紛れもなく大統領自身でした。
ただいまは逃げるしかない。大統領はかつて一夜を共にした娼婦の元へ逃げ込みます。
そこで語られる、軍人たちの横暴。
「あいつら、お金を払ってくれないのよ、私の身体をもてあそんだくせに!!」
自分が政治を司ってきた、その国の庶民の生活、大統領はその現実を思い知らされるのです。
本作では、ときおり、孫の回想シーンが挟まれます。贅を尽くした豪華な宮殿、部屋の一室。お抱え教師付きで、大好きな幼馴染マリアとダンスのレッスンをする、未来の大統領になるはずだった孫の姿。
このあどけない微笑みに、この作品は救われているような気がします。
大統領の椅子から転げ落ち、旅芸人に身をやつし、今や懸賞金のかかった「犯罪者」「逃亡者」となった転落の人生。
本作で監督はどこに視点を定めようとしているのか?
それがちょっと気になりました。
というのも、クーデターが起きた国内の事情は描かれますが、海外へ逃れた、大統領の家族の目線によって、この独裁国家の全体像、また海外メディアの反応というのも描けたはずです。しかし、あえて監督はそれをしておりません。
あくまでも、監督が注視しているのは大統領という仮の名の「おじいちゃん」と「幼い孫」が逃げる、というお話であり、その様子をドキュメンタリータッチで描いて行きます。
本作で、やや食い足りなさを感じるところは、大統領の過去の「愚行」「蛮行」がほとんど描かれていない、ところにあるとおもうのです。
そのため、間接的にどんなひどい圧政があったのかを「難民」の口から語らせて、観客に想像させる、という手法を取っております。
そのためにやや説得力不足を感じますし、悲劇の味わい、なにより庶民の切迫感、というものが「つくりもの」であるという雰囲気が拭えませんでした。
かつて、黒澤明監督の「乱」では、ピーターさんが演じた「道化」が極めて重要な役割を担っていました。これは元ネタのシェークスピアのリア王と同じですね。
「乱」での城主、お屋形様への辛辣な批判も平気で口にしますし、王様の心象風景を道化がうまく導き出し、観客に提示させるよう、実に巧みに描かれていますね。
本作においても、かわいい「孫」が、大統領の心の内を導き出してくれるのか? とおもっていると、むしろ「孫」の可愛さの方が演出上、勝ってしまい、その孫の「幼さ」と「可愛さ」に観客は関心を寄せてしまうのです。
その分、救いはありますが、作品に深みを与えるまでには至っていない、というジレンマが生じます。本作を鑑賞後、なんとなくサラリとした印象を持ってしまったのは、そういうところに原因がありそうです。
目が離せませんでした
思ったほど評価は良くなかったのですが、そんなことは
冗長なところも無く、まとまっています
おじいさんと孫の関係の表現も良い
子連れ狼のように賢過ぎない普通の子
ただ、おじいさん、体力気力ありすぎ
独裁者にまでなった人なので当たり前かな・・・
ラストはこれで良いと思います。
独裁者の末路と…。
独裁者の末路はこんなものであるのだろうが、見逃してはならないのは独裁者が居なくなっても世の中は変わらないという事。
フセイン亡き後、カダフィ亡き後その国は安定しただろうか?
しわ寄せを食らうのは弱いものばかり。
なんて事を考えながら観ていると思い気分になります。
孫と祖父の灯した明かり
今年最後の年納め一本。マフマルバフがやってくれた。どこまで、ぼくの寿命を縮めれば気がすむのか。『サイクリスト』で見せた滑稽さ、『サイレンス』の音色、『カンダハール』の苦しさ。全てが相まって“マフマルバフ福袋”とでもいようか、プレゼントしてくれた。そして、マフマルバフ作品の映像が、こんなに綺麗になってはズルい。独裁者と殿下という関係から、普通のおじいちゃんと孫の関係へと、とけ変わってゆく様は見ていて微笑ましい。が、その道のりで自覚させられる独裁者としての、独裁者の孫としての姿。どちらも、鮮明に生々しく描かれている。この傑作に出会えてよかった。
感動、でくくられるのも…。
‘感動の誕生’とチラシではうたわれているけども、それでくくるのも微妙なお話で…。
独裁者の大統領が国民のクーデターで追われる身に。自業自得な成り行きだけど、追われてからの大統領がこれっぽっちも国民のことをわかっていないのが恐ろしい。独裁者とはこういうものか。
感動のラストというか、意見は当然賛否両論な話の進め方。結論なんてないんだろうな~、という思いで見終わりました。
社会派を堪能
孫のストレートな質問に対する大統領の応え(信念)が徐々に揺らいでゆく演出が圧巻。丁寧に心情と状況の変化を描いている。登場人物の視線や風景、被写体すべてから、監督の訴えが伝わってくる。
投獄され拷問を受けた男が家へ戻るシーンは、男の表情、妻の声、風の音、荒れた風景だけの演出だが、これが素晴らしい。
負の連鎖を断ち切るために非常に考えさせられた。世界の惨状を改めて思う。
胸がつぶれます。
もう少し
突っ込み所は多々ありますが、狙い処はなかなか良く最初は引き込まれます。現実が解らない孫が切なさを出してます。正直、逃げてるシーンが長すぎて疲れて来ます。最後、…って感じで逃げてるシーンを短くしてもう少し時間をかけてそれなりの結論を出して欲しかったですね。
意外とひねりのないシンプルな作り
おおよその期待どうりの作品でした。力に頼る統治は争いの元になり、争いが復讐の連鎖を生む虚しさを現実の世界でイヤと言うほど見せられているので、メッセージは伝わりましたが、それの新鮮味は余りありませんでした。
因果応報と呼ぶには悲しすぎる。健気な瞳に映る、本当の世界。
【賛否両論チェック】
賛:自らの圧政のせいで、どこへ行っても憎しみと嫌悪の眼差ししか向けられない大統領と、そんな彼に寄り添い続ける孫息子の姿が、とても切なくて印象に残る。
否:展開はかなり単調で、ストーリーも後半はかなり淡々と進むので、気をつけないと眠くなりそう。終わり方もかなりの消化不良で、賛否が分かれるか。
それまで自分が行ってきた数々に非道な行いによって、どこへ行っても命を狙われ、正体を知る者には協力を拒まれてしまう。勿論因果応報といってしまえばそれまでのはずなんですが、栄華を極めてきた大統領が、泥と恥辱にまみれていく姿は、非常に悲しく孤独に映ります。
また、そんな大統領に健気に寄り添い、訳も分からぬままに共に旅を続ける孫息子の存在が、切なさをより一層際立たせていきます。大統領に、自分達の今の状況が〝ゲーム”だと教えられていた孫が、ある時
「こんなゲーム、もう嫌だ・・・」
とつぶやく姿なんかは、思わず胸が痛みます。
ただその分、本作の終わり方には賛否両論ありそうなところです。展開も後半に進むにつれて、かなり単調で淡々としていくので、人によっては飽きてしまったり、眠くなってしまうかも知れません。
何はともあれ、平和のありがたさを改めて痛感させられる、そんな作品に仕上がっています。
たった1日で全てが変わる
孫を喜ばせるためだけに、街じゅうの電灯を電話一本で
つけたり、消したり。
馬鹿でかい家に住み、召使を従わせ、何一つ不自由のなかった暮らしも
たった一晩で全てが無になりえる、これが人生。
虐げられてきた市民たちの葛藤うずまく人間臭いラストシーンと、
この独裁者の爺さんの、ボロボロになっても失われなかった
尊大なオーラが強烈です。
去年試写会で観たけど、一般公開されるようなので再度観に行きます。
全40件中、21~40件目を表示