「描写がわかりずらいけどシンプル」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) ビート板教室5年目さんの映画レビュー(感想・評価)
描写がわかりずらいけどシンプル
エンドロールのドラム音がなった途端、やべえ!わからん!!という思いと共に、アカデミー賞受賞作が理解できなかった自分がアカデミー賞から見放された気がして辛かったです。はい。
でも、改めて噛み砕くとそこまで複雑ではない映画だよな、と思えました。
自分へのメモもかねて説明すると
主人公は過去のヒーロー映画の栄光を引きずり、娘からも尊敬されない、かなり落ち目の元スター。
再起を図りブロードウェイの難解な舞台に挑戦しますが、そこで自分の実力のなさと、ハリウッドの有名人ではあっても、真の芸術家たる舞台俳優にはなれないんだと、思い知らされます。
どんなに頑張っても結局は有名人としての評価でしかない。トラブルからのパンツ一丁騒動も、舞台俳優としての評価からは程遠いものだと、批評家の老女に言われて初めて気が付く体たらく。
主人公のおっさんは二日酔いの果てに本番当日、もう死んでしまおうと思うのです。バードマンにほとんど自我を乗っ取られてしまい、バードマンたる自分を殺して別人になりたい、なるしかないと思う。
この心理状態は偶然なのか、主人公が舞台で演じる役の心理状態、葛藤と一致します。
クライマックス直前、楽屋での元奥さんとの会話シーンは、舞台のテーマであった、愛について語るという事を初めて主人公が出来た瞬間です。死ぬことを決意してやっと元奥さんの心に響く、愛についての話が出来たのです。
そして自死未遂。観客はスタンディングオベーション、新聞の一面を飾りました。
そこでの謳い文句は、新しい表現の確立。
この新しいという所がキモで、それ故に批評家の老女はうけつける事が出来ず早々に客席を後にしたのでしょう。
その後のシーン。チープ極まりないアメコミヒーロー達が舞台上で何やらやっていたのは、主人公の夢なのかなと思います。そこにはヒーロー達が彼にとってチープなものであると決定的に認識された事を示しており、主人公の心の変化だと思います。
だから最後に見たバードマンもトイレで排便をしています。かっこ悪いです。
ラストシーンはバードマンではない新しい姿で羽ばたいた事を示し、娘に認めてもらえる父親になれた。というラストだと解釈しました。
実は結構シンプルでスッキリした話なんだと思います。