「二回目見てあらためてすごさがわかる」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
二回目見てあらためてすごさがわかる
昔、人気コミック「バットマン」の映画主演をつとめたマイケル・キートン主演。一回目、半分くらいは本当の世界なのかなと思って見ていた。実際、自分はマイケル・キートンが、どんな役者なのか知らなかった。本作で、イメージががらりと変わり、ファンになっていた。バットマンというキャリアのおかげで多分いろいろひどい目にもあったのだろうと想像する。「バードマン あるいは、無知がもたらす予期せぬ奇跡」、このタイトルのインパクトは大したものだ。原題からそのままとった邦題も、ずっと頭に残る。
物語は、ブロードウェイのひとつの古いシアターの数日。脚本演出主演のひとりの男とその周辺を追う。舞台、舞台袖、観客席、楽屋と廊下と衣装部屋、屋上、劇場の外の街、玄関と楽屋裏口。日本で言えば下北沢あたりをノーライトで走り回るということか。手持ち風のカメラは縦横無尽に飛び回る。鳥男の真の意味はこれか。キャメラワークはとにかくとくにすごい。ほとんどカットなしに繋がっているようだが、もちろん、そんなわけはない。演出、脚本、めちゃくちゃ素晴らしい。すべてが完璧。まず、劇中劇にレイモンド・カーヴァーという実在する作家を使っているところが心憎い。そのおかげで、どこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからなくなってくる。まあ、本物の街を含めてすべて脚本に書かれたものすごく精密に仕組まれた劇映画であることは確かだが。カーヴァーや、マーチン・スコセッシ、マイケル・ジャクソン、ブリキ人間笑などの固有名詞が散りばめられ、その瞬間だけ、こっちの世界と繋がってくる。若い女優二人に、「新人の」老男優と付き人の娘、そこへ純粋さと未知数を体現する新進気鋭の舞台役者マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)という男が途中から加わることで更に虚構性は増す。好き嫌いの分かれ目もここだろう。
リーガンの娘役のエマ・ストーンが上手い。マイケルが文字通り、裸の自分を晒す。とにかく編集時の後処理を含めた撮影技術がすごい。役者の演技とフレームの切り取り方がいい。商業演劇と役者、舞台製作と資金繰り、批評と批評家など、すこし一般うけはしづらい内容ではある。しかし非常に実験的で挑戦的な作品であることは間違いない。カーヴァーを、読み返したくなった。