アメリカン・スナイパーのレビュー・感想・評価
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使命感という“病魔”
スナイパーというのは、極めて隠密性の高い狙撃を行う人間のことの。
あなたの現在位置から突然弾が飛んできて、あなたは即死する。
即死しなかったら、あなたは痛み苦しみで倒れ、トドメの弾丸を再びもらうか、
あるいは、あなたを助けようと駆け寄った人間を誘き寄せる餌として、トドメを刺せずにする。
長距離射撃というやり方であるため、被弾は銃声より先に発生する。
正々堂々という意味では、極めて卑劣なやり方である狙撃。しかし戦場で正々堂々なんて言葉は存在しない。
いかに効率よく、いかに確実に殺すかが焦点になる。
第二次大戦時に狙撃手として名を馳せていたシモ・ヘイヘという人がいる。
彼は生前、おびただしい数の人間をライフルのスコープに捉え殺してきたが、その行為と功績についてを「上が命じたからやったまでのこと」だと語っている。
今作の主人公クリス・カイルも、シモ・ヘイヘ同様、一貫して感情的なものを語らず、「蛮人をやっただけ」と言い、自ら行った殺人についてを正当化し、愛国心を語った。
アメリカという国に住む人間が愛国心を掻き立てたのは、今日まで続くテロによる被害だ。
それはなにもクリスだけの話ではない。軍に志願した人間のほとんどが抱いた憎しみという形の愛国心を背負い、出兵した。
まさに“背負った”だった。
戦場で彼らは更なる憎しみをもらう。
仲間が身体障害をもらい、殺され、出兵以前からあった憎しみは更に強大化していくが、それらを積み重ねるたび、彼らの愛国心はより強固なものになり、活気づく。
しかし軍という枠組みで行動しているアメリカに対して、相手は不特定多数のテロ組織あるいは本意不本意からなる市民だ。
つまり終わりが見えない。シモ・ヘイヘが活躍した時代とは異なり、明確な終わりを見出だせない戦争に突入してしまったのだ。
先の戦争とは違い、不条理な状況を押し付けられる戦争。
クリスの愛国心に決着がついても尚、彼は現代の戦争という病魔に悩み続ける。
これが戦争。人体欠損といったショッキングな映像を見せる状況と共に、もっと身近な部分で戦争を感じさせる。
クリスを見て、何を思うか。
犠牲になるものとは
リアルタイムな戦争映画
序盤はいらない
●戦争が日常になるリアル。
狙撃手クリス・カイル。「レジェンド」の異名をもつ。いわゆる戦争映画だが、その実、家族との葛藤、深層心理をえぐり出している。
初めての任務。ターゲットは母親と子供。殺さなければ仲間がやられる。葛藤と緊張感。空気が張り詰める。
しかし、それがいつしか日常になる。任務中に妻と電話したり、同僚と冗談を言い合ったり。実にリアルだ。そうでもしなけりゃ、やってられないのだろう。
そして、砂嵐のシーン。息するのも忘れたわ。生きた心地がしなかった。
これが戦争なのだ。ハンナアーレントが言ったように、戦争は人の思考を停止させる。そういった逆説的アプローチの映画なのでわないか。
さらに妻がいう。「あなたは帰ってきたけど、心は戦場に置いてきたまま」PTSDとの戦い。
殺人マシーンに化した彼もリアルなら、国を守りたいという責任感も事実だと思う。イラクとはかけ離れすぎたアメリカでの平和な日常。
誰も戦争のことを口にしない。このギャップ。音響がジワジワくる。
病むよなあ。戦争は誰も幸せにしない。
靖国の先人たちがふと頭をよぎる。彼らが守りたかった日本という国は、こんな形でよいのかと。
巨匠クリント・イーストウッド。細部はともかく全体で魅せる技はさすが。
しかし、ラストは日付を先に出しちゃいかんよー。まあ、おいおいウソだろって気にさせられたから許すか。
ながく残りそうな名作
どんな立場から見ても極力公平な、俯瞰した視点で描かれている映画だと思います。
さまざまな解釈ができそうですけど、やっぱり根底に祖国愛への偏りが若干感じられます。そこをどうとるかは見る人の自由でしょう。日本人にはもう一歩深いところで共感はできないかもしれませんね。
しかしやっぱり作品全体としての、凛とした空気感には圧倒されるものがあります。名作として残りそうな作品。
戦場に英雄なんていない
クリント・イーストウッド作品だったので、ストーリー重視の傾向で作られているかと思えば、戦闘シーンにもかなり力が入っていることに、少し驚きました。器用な監督ですわ。
まず、映画のタブー的なことに触れて、現実のむごさを伝えるのが相変わらず、上手いなぁと…
更に、主人公が段々と戦争、戦闘マシーンへとなっていく姿が、何ともリアルでした。彼にとって、常に緊張感のある戦場で人を殺める事でしか、不安を解消することが出来なくなってしまったのでしょうか…
仲間を救っている分、相手を殺している。
殺した分だけ己の人間らしさも殺している様な印象を受けました。
重圧な映画でした。
因みに戦闘シーン好きな人も満足できると思います!(笑)
戦争ってむなしい
イラク戦争で活躍した実在するスナイパーを、クリントイーストウッドが...
アメリカ軍人も人間
英雄の裏側
2003年からズルズルと約7年間続いたイラク戦争。私は当時小学生だったので朧げではありますが、9.11のことも、その後の出兵のことも、リアルタイムでニュース報道されていたのを覚えています。だから、作中に描き出された世界が「現実」だったということが強く感じられる。
印象的だったのは、兄弟のように親しかった仲間が撃たれてから、クリスの表情が変化したところです。はじめは、敵とはいえ人を撃つことにためらいを感じとまどっていた。しかし戦友を失ってから、彼は仇を討つために迷いなく引き鉄をひくようになります。復讐はあらたな復讐の芽を生み、敵兵を斃し続けるその行為は、確実にクリスの心を蝕んでいくのです。
「狙撃手」は一人に狙いを定めて一発で仕留める。引き鉄をひけば、必ず一つの命が奪われる。その手には人の死にゆく感覚が強く残る、酷な仕事だと感じました。
もうひとつ心に残ったシーンは、心に傷を負って米国に戻ってきたクリスに、脚を失って退役した元部下が「あなたは英雄です」とお礼を言う場面です。
クリスの狙撃によって命を救われた多くの米国兵にとって、彼は英雄なのです。祖国のため、戦友の敵討ちのためとはいえ、自らの手を汚した罪悪感に苛まれるクリスにとって、この言葉は救いであり、再起へのきっかけだったのではないでしょうか。
「アメリカン・スナイパー」には、”イラク戦争の英雄”が一人の兵士として、また同時に一人の父親としての葛藤する姿、そして戦争を通じて失ったものが描かれています。イーストウッド監督は反戦で知られていますが、この映画は戦争に対し賛成も反対もせず、事実を伝え、観る者にどう思うか問いかけているように感じました。
ヒーローだな?
彼は英雄
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