アメリカン・スナイパーのレビュー・感想・評価
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鮮やかで確かな見応え満喫
戦争と人間
冒頭、カイルは母と子供を標的にする。
確かに行き詰まるシーンではあるが、それはカイルが初めての標的に対峙したという緊迫感であった。1回目の派遣。
妻は気づく。
ふたりの間に子供が生まれ、最高のときのはずなのに、夫の様子がすこしおかしいと。話しかけても虚空を見つめる夫をみた。
2、3回目の派遣。
イラクの子供がバズーカ砲をもって、アメリカ兵に向かっていこうとしている。カイルは撃たなくちゃならないじゃないか。
「やめろ、早く捨てろ!くそガキめ」と心の中で叫ぶ。子供はその行為が怖くなって、途中でバズーカ砲を捨てる。カイルはふっ〜と深いため息をつく。
ふたりめの子供が生まれ、ガラス窓越しに見る。その愛くるしい姿をみる。だが、その赤ちゃんが泣いているのをみて、突然カイルは怒鳴り声をあげる。「俺のベイビーが泣いてるじゃないか、早く、あやしてやれ!」と。
そのとき、彼の頭に浮かんだこと。
あのときのイランの子供とガラスの向こうにいる自分の子供。
どう違うんだ?
生まれが違う。親が違う。国が違う。
でも、それって子供たちのせいか?
そう考えると、迷う自分がいる。疑問に思う自分がいる。
そして、4回めの派遣。
イラクの最強の狙撃兵を撃つ。この相手によって、どれだけのアメリカ兵が命を落としたか。考えられないほどの時空を飛んで、カイルの弾丸はイラクの狙撃兵を仕留める。
カイルは、その間、女子供を含めイラク人160人も狙撃してレジェントと呼ばれていた。
そのカイルも、例外はなかった。そう、PTSDが襲いかかってくる。
フラッシュバックに襲われる。恐怖のシーン、残酷なシーン。
そして、自分の弾丸がイラクの人の命を奪ったことを。
その病も、同じように心の傷、体の傷を負った同じアメリカ帰還兵への支援ボランティアによって癒されつつあったのだが。
しかし、カイルは精神に異常を負った帰還兵によって撃たれ命を絶つことになるのだ。妻が最後に見たのはカイルと帰還兵の後ろ姿だった。
まさに報復の連鎖、敵兵だけでなく、自分サイドだと考えている人にもその連鎖は始まっているのだ。
いま、日本にもIS(イスラム国)によるテロリズムの標的が言われている。そう、その報復の連鎖のなかに巻き込まれてしまったのだと思う。
僕を含め普通の人々を襲う恐怖の連鎖、報復の連鎖。
その原点の立ち戻ってみてもも無駄なんだろうか?
勇ましい言葉だけでなく、深く考えてみなくてはと思う。
これが“戦争”。悲惨かつ壮絶な戦場の真実。
【賛否両論チェック】
賛:心を蝕まれていく主人公を通して、戦争の悲惨さがこれでもかと描かれていく。戦場のリアルな緊迫感も伝わってくる。
否:当然ではあるが、アメリカ側から観た戦争しか描かれない。残酷な描写もかなりあり。
元来は1人の心優しい夫だった主人公が、戦場から帰ってくる度にふさぎ込むようになり、些細な物音や他人の行動に過敏になっていく様が、非常にリアルに描かれていて、胸が痛みます。そして、そんな主人公が命がけの任務に就いていた戦場での、どこから敵が襲ってくるか分からない恐怖や、大切な仲間を殺される哀しさも、克明に描かれていきます。自伝の映画化なので、勿論アメリカから見た戦争の真実しか描かれてはいませんが、それでも戦争の悲惨さを伝えるのには、充分すぎるほど重厚な物語に仕上がっています。
R-15なので、残酷な描写も結構あります。その辺はご注意を。心に残る1本といえそうです。
刺さる映画でした。。
アメリカンスナイパー、すごい映画でした。
リアルタイムな緊迫感が鬼気迫る
ひきずる映画・・
公開初日・・見てきました。
レイト11時過ぎからの上映でもお客さん結構入ってましたw
イラクの戦場に4回派遣され米軍史上最多の160人を射殺した伝説のスナイパークリス・カイルと言う人物を映画化した作品。
戦場での目を背けたくなる映像や
テロリストとの人間とは思えない行動
緊迫感はもとより
これはそれ以外に実際の戦場に行った兵士が
無事に帰ってくる事が出来ても
戦場と自宅を行ったりきたりするうちに
そのギャップに疑問を抱き
肉体は家族の元に帰って来れても
心は戦場においたまま帰ってこれない・・
戦争は心すら破壊していく・・・
見終った後のこのモヤモヤ感・・
あのエンドロールの演出が物語ってます。
見てる人への問いかけだったと。
今この時代にも実際におこっている戦争。
日本人はつくづく平和ボケなんだと・・思わさる。
IMAX 2D 字幕
英雄と讃えられた一人の戦争被害者への鎮魂歌
クリント・イーストウッドの前作「ジャージー・ボーイズ」は確かに好編だったが、世間の評判ほど響くものが無かった。
イーストウッド作品へのハードルは、宮崎作品同様、つい上がってしまう。
「ミリオンダラー・ベイビー」「チェンジリング」「グラン・トリノ」のようなメガトン級の作品を期待するのはもう酷かなと思っていたら…!
アメリカ海兵隊最強の狙撃手と言われたクリス・カイルの回顧録を映画化した本作。
既に伝えられている通り、アメリカではアメコミ映画並みのメガヒット、また84歳にして自身最高の興行収入を樹立。
イーストウッド、恐るべし!
息が詰まりそうなほどの緊張感、緊迫感!
ドキュメンタリーのような臨場感。
9・11から続く現情勢を交えた硬派な内容ながら、エンタメ性も充分。
まさしく超一級品!
タイトルに“アメリカン”とつき、戦争やネイビーシールズが題材故、アメリカのプロパガンダ映画と思いがち。
人それぞれ見方・意見はあるだろうが、そうは感じなかった。
クリス・カイルはテキサスの荒くれ者で、愛国心強く、強いアメリカの正義を信じる男だ。
そんな彼が度重なる任務で蝕み、病んでいく。
任務とは言え、女子供を射殺して平常心で居られる訳が無い。
英雄としての姿ではなく、英雄と讃えられた男の内面を、ヒリヒリと、じっくり描写。
戦争に英雄など居ない。「父親たちの星条旗」と同じテーマだ。
本作最大の功労者はイーストウッド以上に、主演のブラッドリー・クーパー。
映画化権を獲得し、プロデュースも兼任、大幅に増量しての熱演。
オスカーノミネートはサプライズと言われたが、実際見る限り、妥当。
妻を愛し、子供を愛し、家族を大事にする一人の男。
任務を果たしただけ。
戦争の狂気が狂わせた。
戦争から解放されて、待ち受けていたのは…。
彼も戦争被害者なのだ。
話題のエンディングは、そんな彼への鎮魂歌。
ヒーローは、きみの中にいる
戦争と家族
最初に言っておきますと、この作品は映画館で観るのがオススメです。骨太で腹にずっしりと来るアクションシーン、そして、あのエンドロール、ぜひ大迫力の画面で体験してもらいたいと思います。
この作品で物議を醸しているのはイラク戦争の大義名分なのですが、クリント・イーストウッド監督は、イラク戦争に対する自身の考えをここでは出そうとしていないという風に思えました。ただただ、クリス・カイルという一人の軍人とその家族、戦友にまつわる事実を淡々と描いてみせた、そんな印象を受けます。
戦争に参加するか否か、それを賞賛するか否かは、未だ個人の自由だと僕は思います。しかし、この作品でイーストウッドは、戦争によって人々の生活やお互いの関係性、自意識などが変わっていく、もしくは崩れ去っていく様子を否応なしに見せつけ、もう一度、我々は何と戦うのか、なぜ戦うのかを、観客に問いつけます。
そしてもうひとつ思ったのは、クリス・カイルは一体誰のために、戦場へ何度も行かねばならなかったのか?これはもちろん本人の意志で戦地へ赴いているのですが、その理由ははっきりと言葉では出てきていません。家族のためなのか、国家のためなのか、戦友のためか、神のためか、自分のためか、クリス本人も最後は分からなくなっていたのではないでしょうか。
観終わった後思い出したのが、数年前にWOWOWで放映された海外ドラマ「ザ・パシフィック」です。スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスが手がけた、太平洋戦争において、日本軍と戦う米軍兵の姿を、兵員個人の視点から描かれるのですが、この作品においても主人公の青年は、退役後にPTSDに蝕まれていく様子が描かれています。この青年も実在の人物で、心臓に疾患を持ちながらも、兵として志願します。そして、数々の激戦を生き抜く中で、静かに精神のバランスを崩していきます。戦闘シーンも、かなりリアルでヘビーなので、興味ある方は観てみると良いと思います。
イーストウッドもスピルバーグも描こうとした戦争の「本質」は同じなのかもしれません。それは言葉にするのは難しいですが、彼らはそれを、映画という形で表してきたに違いありません。
そういえば、今年度のアカデミー短編ドキュメンタリー賞に、"Crisis Hotline: Veterans Press 1"が選ばれました。偶然なのか分かりませんが、退役軍人たちのためのカウンセリング・コールセンターを追った作品のようです。こちらもぜひ見てみたいです。
Dolby® Atmos™で観賞しましたが
見たい人が見たいように見る映画
クリント・イーストウッドの「アメリカン・スナイパー」を見た。迫力ある引き締まった映画で、常に乾いた銃の音が轟いていた。
クリント・イーストウッドの戦争映画といえば、私は「戦略大作戦」が好きで、劇場でも見たし、テレビやビデオでも何回か見ている。45年前のそんな映画を思い出しながらも、作り物でない本物に近い戦争映画を作った彼の腕前と時代の彼岸を感じていた。
ところで、この映画をどのように評価するかだが、イラク戦争を正当化する作品と見ることもできるし、逆に戦争で心を病んだ兵士たちとむなしい戦いを映し出すことによって、反戦のメッセージを発しているととることもできる。クリント・イーストウッドはあえて自分の主張を前面に出すことはせず、淡々と事実を描いていく。
結局は、この映画を見る人たちは自分が見たいように解釈をし、自分が得たいメッセージを受け取ることになるのだろう。
さすが!
最高のエンドロールと鑑賞直後は記してはいたが・・
心をヤスリでシゴかれた気分…。
反戦を誓う
アメリカ軍史上最高の狙撃手、アメリカ海軍特殊部隊SEALsのクリス・カイルを描いた作品。
作品では、クリス・カイルが、戦闘によって徐々に心を蝕まれ、そして、退役後、傷痍軍人やPTSDを負った退役軍人たちとの交流で徐々に人間の心を取り戻していく姿が描かれています。特に、二度目、三度目の派遣期間前後、アメリカ国内にいるにもかかわらず、大きな音に反応している様は痛々しくも感じます。タヤが「心は戻ってきていない」と言う様な事を言っていますが、まさにその通りだと思いました。
クリント・イーストウッドらしい、骨太の作品です。って言うか、実在の人物を描いた伝記映画なので、基となった人物の人生が骨太ということでも有るのだと思いますが。ラストは、クリス・カイルの葬儀のシーンになっています。英雄らしく、パトカー・白バイに先導されて車列が進んでいっていました。めっちゃアメリカっぽいなぁと思ってしまいました。退役軍人ではあるけど、国に十分奉仕した人間だからこその扱いです。
いやぁ、でもねぇ、いきなり人の家に銃を持って踏み込んで「何で居るんだ!」とか怒鳴ってみたり、勝手に監視場所にしたりと、「アメリカ軍酷ぇ」と思う所が結構ありましたよ。ノックして、礼儀正しく入ることが出来ない環境と状況だったのかもしれないけど、あれじゃぁ、現地の市民から歓迎されないよね。それだけが、いまの混沌としたイラク・シリア情勢を産んだとは言わないけど、その原因の一端になったのだとは思いました。
集団的自衛権とか、危険地帯での人質救出作戦とか、勇ましいことこの上ないですが、それは、その後の犠牲を覚悟してこそできること。それと、残された家族を守っていくことができるからこそできること。日本に覚悟ができているか?!出来ていないと思うよ。
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