劇場公開日 2015年2月21日

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「戦争と人間」アメリカン・スナイパー xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5戦争と人間

2015年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

幸せ

冒頭、カイルは母と子供を標的にする。
確かに行き詰まるシーンではあるが、それはカイルが初めての標的に対峙したという緊迫感であった。1回目の派遣。
妻は気づく。
ふたりの間に子供が生まれ、最高のときのはずなのに、夫の様子がすこしおかしいと。話しかけても虚空を見つめる夫をみた。
2、3回目の派遣。
イラクの子供がバズーカ砲をもって、アメリカ兵に向かっていこうとしている。カイルは撃たなくちゃならないじゃないか。
「やめろ、早く捨てろ!くそガキめ」と心の中で叫ぶ。子供はその行為が怖くなって、途中でバズーカ砲を捨てる。カイルはふっ〜と深いため息をつく。
ふたりめの子供が生まれ、ガラス窓越しに見る。その愛くるしい姿をみる。だが、その赤ちゃんが泣いているのをみて、突然カイルは怒鳴り声をあげる。「俺のベイビーが泣いてるじゃないか、早く、あやしてやれ!」と。
そのとき、彼の頭に浮かんだこと。
あのときのイランの子供とガラスの向こうにいる自分の子供。
どう違うんだ?
生まれが違う。親が違う。国が違う。
でも、それって子供たちのせいか?
そう考えると、迷う自分がいる。疑問に思う自分がいる。
そして、4回めの派遣。
イラクの最強の狙撃兵を撃つ。この相手によって、どれだけのアメリカ兵が命を落としたか。考えられないほどの時空を飛んで、カイルの弾丸はイラクの狙撃兵を仕留める。
カイルは、その間、女子供を含めイラク人160人も狙撃してレジェントと呼ばれていた。
そのカイルも、例外はなかった。そう、PTSDが襲いかかってくる。
フラッシュバックに襲われる。恐怖のシーン、残酷なシーン。
そして、自分の弾丸がイラクの人の命を奪ったことを。
その病も、同じように心の傷、体の傷を負った同じアメリカ帰還兵への支援ボランティアによって癒されつつあったのだが。
しかし、カイルは精神に異常を負った帰還兵によって撃たれ命を絶つことになるのだ。妻が最後に見たのはカイルと帰還兵の後ろ姿だった。
まさに報復の連鎖、敵兵だけでなく、自分サイドだと考えている人にもその連鎖は始まっているのだ。
いま、日本にもIS(イスラム国)によるテロリズムの標的が言われている。そう、その報復の連鎖のなかに巻き込まれてしまったのだと思う。
僕を含め普通の人々を襲う恐怖の連鎖、報復の連鎖。
その原点の立ち戻ってみてもも無駄なんだろうか?
勇ましい言葉だけでなく、深く考えてみなくてはと思う。

xtc4241
浮遊きびなごさんのコメント
2015年2月23日

【閲覧注意:コメント内にネタバレ含みます】

xtc4241さん、はじめまして。
ちょくちょくレビュー拝見させていただいております。

「蛮人どもを殺しただけ」と言い放つほどに
アメリカの正義を疑わなかった男が、
いかにして精神を苛まれたか。その流れを
丁寧に考察したレビュー、素晴らしいと思いました。
これは単純な英雄譚じゃなく、むしろどんなに強靭でも
誰一人無事で済まされないのが戦争だ、という話なのかも。
その真っ只中に日本が今後巻き込まれはしないか、
仰る通り慎重に考えなくてはです。

ただ……あの結末についてはこれから鑑賞する方の為に
伏せておいた方が良いかと思います。
私はあの結末を知らずに観て物凄い衝撃を受けましたが、
観る前に情報を知っていたらそれも大減してしまうかと……。
ネタバレ指定か結末を伏せるようにしていただけないでしょうか。

コメント失礼致しました。
次回レビューも楽しみにしております。

浮遊きびなご
浮遊きびなごさんのコメント
2015年2月23日

【閲覧注意:コメント内にネタバレ含みます】

xtc4241さん、はじめまして。
ちょくちょくレビュー拝見させていただいております。

「蛮人どもを殺しただけ」と言い放つほどに
アメリカの正義を疑わなかった男が、
いかにして精神を苛まれたか。その流れを
丁寧に考察したレビュー、素晴らしいと思いました。
これは単純な英雄譚じゃなく、むしろどんなに強靭でも
誰一人無事で済まされないのが戦争だ、という話なのかも。
その真っ只中に日本が今後巻き込まれはしないか、
仰る通り慎重に考えなくてはです。

ただ……あの結末についてはこれから鑑賞する方の為に
伏せておいた方が良いかと思います。
私はあの結末を知らずに観て物凄い衝撃を受けましたが、
観る前に情報を知っていたらそれも大減してしまうかと……。
ネタバレ指定か結末を伏せるようにしていただけないでしょうか。

コメント失礼致しました。
次回レビューも楽しみにしております。

浮遊きびなご