「アメリカの家族」アメリカン・スナイパー yanpakenさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの家族
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映画のうたい文句でも主人公は「家族」と「戦争」とのはざまで迷うことになっているが、主人公は家族を守るために戦争に行き、家族同然と考える戦闘チームのために戦う。敵の狙撃手もおそらく同じで、妻と思しき女性が手を合わせて狙撃手の無事を祈り、その女性のために狙撃手は戦う。戦士にとって家族と戦争は矛盾していない。だから、主人公は最後まで、戦争を肯定する。
クリント・イーストウッドは、妻や子は羊で、男は羊を守る番犬であるという価値観をストレートに表現し、その価値観の耐久力を戦争という極限状態の中で試した。結局、番犬は良き父親になるわけだが、また、いつ番犬としての獰猛さを発揮するかわからない。
家族こそ生存の単位だということが強調されるが、生存の単位の中にこそ戦争参加の意思の種があることが意識されている映画だという点で、硫黄島の2部作よりも深い認識に立った戦争映画になっている。
ただ、その家族が核家族として描かれているのがいかにもアメリカらしい感じがしたが、生存の単位を強調する監督の意図なのだろうか。主人公の兄と弟が違った運命をたどる点も、映画の最後まで、その後の弟の状態が気になったが、何も描かれなかったし、主人公に影響を与えた父が主人公の戦場の活躍にどう反応したかも気になったが不明なままだった。
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