劇場公開日 2015年2月21日

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「●戦争が日常になるリアル。」アメリカン・スナイパー うり坊033さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0●戦争が日常になるリアル。

2016年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

狙撃手クリス・カイル。「レジェンド」の異名をもつ。いわゆる戦争映画だが、その実、家族との葛藤、深層心理をえぐり出している。
初めての任務。ターゲットは母親と子供。殺さなければ仲間がやられる。葛藤と緊張感。空気が張り詰める。
しかし、それがいつしか日常になる。任務中に妻と電話したり、同僚と冗談を言い合ったり。実にリアルだ。そうでもしなけりゃ、やってられないのだろう。

そして、砂嵐のシーン。息するのも忘れたわ。生きた心地がしなかった。
これが戦争なのだ。ハンナアーレントが言ったように、戦争は人の思考を停止させる。そういった逆説的アプローチの映画なのでわないか。
さらに妻がいう。「あなたは帰ってきたけど、心は戦場に置いてきたまま」PTSDとの戦い。
殺人マシーンに化した彼もリアルなら、国を守りたいという責任感も事実だと思う。イラクとはかけ離れすぎたアメリカでの平和な日常。
誰も戦争のことを口にしない。このギャップ。音響がジワジワくる。

病むよなあ。戦争は誰も幸せにしない。
靖国の先人たちがふと頭をよぎる。彼らが守りたかった日本という国は、こんな形でよいのかと。
巨匠クリント・イーストウッド。細部はともかく全体で魅せる技はさすが。
しかし、ラストは日付を先に出しちゃいかんよー。まあ、おいおいウソだろって気にさせられたから許すか。

うり坊033