「なによりも雄弁に語りかける映像美。」草原の実験 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
なによりも雄弁に語りかける映像美。
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草原に広がる大量の羽毛、その中にはテーブルのみがただ佇んでいるのみ。周りにはがれきが広がっている。いったいこの地で何が起こったのか。
大草原にポツンと佇む家に住む父と娘。平穏な日々の暮らし、自然のいとなみ、静かに流れる時間。ここにはある意味世界と隔絶した彼らだけの世界があった。
何百年もの間、先住民族の人々はこの地で自然とともに暮らしてきた。そこでは日々変わらぬ静かな時間だけが過ぎていった。
やがて、父は病で倒れ一人ぼっちになった娘。そのいいなずけと婚姻の儀式を結ぶ。しかし、娘は旅人の青年と恋に落ちて二人は結ばれる。
当たり前のように繰り返されてきた人々の日常。それはこの地でこれからも永遠に続くと思われた。
しかし、無情にもこの世界とは違う邪悪な世界はそんな彼らの暮らしをものの見事に破壊する。
悪魔の火によりすべてが一瞬で消え去った。あの美しい自然もあの美しい娘も。
旧ソ連時代、セミパラチンスク核実験場で繰り返された核実験は機密事項として周辺住民にその危険性が一切知らされなかった。何百回と行われた実験により周辺住民は数百万人単位の人々が放射線被害を受けた。
全編にわたる美しい映像、これらの映像とは対照的に愚かな人類による蛮行をまざまざと見せつけられる。
映像だけでこの世界の残酷な不条理を見事に描いた佳作。
ちなみに邦題はほぼネタバレであり、これは酷過ぎる。
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