「素晴らしい」プリデスティネーション vkljさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい
オーストラリア映画ということもあって低予算でうまくまとまった作品の印象。間違ってもハリウッドのアクション映画のような規模感は期待すべきでない。
加えてアクション映画のようなポスターだが、実際のところはストーリーの伏線回収と綺麗な映像や古き良き時代のアメリカの雰囲気が楽しめる映画であって、ドンパチを見るような映画ではないのは確か。
ストーリーの伏線回収は見事で、非常に鮮やかだったし、サラスヌークとイーサンホークの演技は本当に光っていた。ただ、このようなやや難解とも言えるストーリーは好き嫌いが分かれるはず。好きな人にはたまらない映画であることは間違いない。
一度最後まで見た後に、あの時のセリフはこれを暗示していたのか!と節々を思い出すことができるので、個人的には一度の鑑賞ではもったいないと思ったくらい。
具体的に例を出すと、顔を大やけどして治療を受けた後に「この顔じゃ俺の母親でさえ俺だとわからないだろうな、、、」と主人公が鏡を見てつぶやく場面は、後から考えればなるほどである。
もう一つ例を出すと、病院で自分の赤ちゃんを連れ出す直前、上司がタイムトラベルでやってきて、「緊急事態の時だけ今でもタイムトラベルをするんだ」と主人公に行っていた場面。これは恐らく主人公が自分の辛い人生を鑑みて任務に対して弱気になり、赤ちゃんを1945年に連れ戻さないという選択肢が生まれてしまう世界が存在すること、そして上司がその分岐を緊急事態と考えて食い止めようとしていることが示唆されている。
予算の少なさは画面から伝わってきてしまうが、脚本は非常によく練られていて、一見の価値があるのは間違いない。
それにしても人生の悲哀を感じさせてくれる映画だ。世の中そんなもんさ、と一言で片付けられるような、そんな楽な人生など存在しないということを、映画を通じて教えてくれる。