「小物の使い方が上手い。」あと1センチの恋 鈴木さんの映画レビュー(感想・評価)
小物の使い方が上手い。
常に軽快な音楽と共に時が流れていく。
作品は主役がロージーとアレックスの幼い頃からスタートしていくが、二人の、特にロージーの心境を表すような音楽が流れていて、退屈せずに見ることができた。話の大筋としてはありがちな幼馴染モノかもしれないが、ここまでかというほどすれ違い続ける二人に対しては終始ドギマギさせられた。さらに、それらのシーンにも効果的に音楽が使われており、ストーリーラインで心を打つというよりは、そのシーンシーンの盛り上がりで楽しませるような映画だった。最後はアレックスとロージーは結ばれるので、ハッピーエンドというところだろうか。
また、その他の登場人物もみなキャラクターが立っていて面白かった。ロージー妊娠をした後に立ち寄った薬局で出会ったしがない店番と、親友になるまでの流れは、もう一つのストーリーとして見ることができるし、二人の息の合った掛け合いは見ていて飽きないものだった。また、ロージーの娘であるケイティーも、物語で大きな役割を果たした。彼女は夢多き少女であったケイティーを現実の世界にとどまらせた重宝人であり、グレッグとの結婚という、ロージーとアレックスにとっての大きな転機となる出来事を引き起こした本人でもある。そう言った意味で、ケイティーとはロージーの人生をすべて台無しにしてしまっているといっても過言ではない。一方で、ケイティーはロージーとアレックスを最終的に結びつけるキューピットともなった。さらに、彼女との思い出は、ロージーにとってかけがえのないものである。このような皮肉とも思える構造も、とても面白かった。さらに、彼女とその男友達に、アレックスとロージーを投影させるという手法は、単純でありながらも、子育てという新しい人生を歩みかけたロージーに対して、アレックスという過去を常に忘れさせないでおく効果があり、物語にうまい影響を与えていると感じた。そういった意味で、この映画は、登場人物や、音楽といった小物を効果的に利用することで、単純なストーリーラインの物語を劇的に魅力的にしたものであるといえよう。そういったいみで、この映画の作成者の方々にはあっぱれというほかがないであろう。
しかし、個人的にはロージーほどいい女はなかなか存在しないと思うが、アレックスは典型的なダメ男だと思うので、今後の生活が心配でもある。また、アレックスとロージーの恋愛譚のアクセントとして利用された、グレッグ、ベサニー、サリーといった面々の気持ちというものを考えてみると、ひとえにこれをハッピーエンドの恋愛物語として見ることはできるのだろうか。
また英米の恋愛映画を見ていてしばしば思うことだが、彼らは離婚というものに対する捉え方がやはり我々日本人とは違うように思われる。