「猫大好き坂本教授(苦笑)」FOUJITA いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
猫大好き坂本教授(苦笑)
単に似ているという理由で題名つけるのもどうかと思うのだが、激似なので仕方ない。
年明けの映画鑑賞はさながら美術巡りの様相を呈してくる。サグラダファミリアとこの映画。なんだか崇高な芸術を拝見した様で、頭と気持ちがついていかないような・・・ 単に自分がゲスなだけなんだけど。
藤田嗣治という画家は知ってそんなに年月が経っていない。絵画で知ったと言うより、その数奇な運命、奇怪な行動の数々、そして前述の肖像のアバンギャルドさが妙に頭に残り、その苛烈な印象は、その後鑑賞した裸婦画や、その対局にあるアッツ島玉砕、最後のフランスの礼拝堂の壁画と、まるで波乱万丈菜な人生の物語を紡ぐような編纂である。
その藤田の伝記的映画であるので興味が湧き、観覧することに。
映画自体もまるで絵画の一部のような研ぎ澄まされた緊張感のある静かな情景が続く。音楽を少なめにしかし、効果的に流しているので、より一層の張り詰め方である。オダギリジョーもロイド眼鏡の奥の眼の感じが藤田のそれと似ていて、芝居も良い。
所々、印象的なシーンがあり、パリでのおふざけの舞踏会、アッツ島玉砕の絵の前で観覧者が泣き崩れる様(戦中の戦意高揚の為なのだが、作者自ら、作品の前に立つことがあったのだろうか)、そして、藤田の内太腿の何番目かの妻の裸婦画が描かれた刺青を愛でるシーンなど、芸術的な演出がされていた。
で、総じて全体的に思うことは、綺麗なのだが、藤田そのものの人間像の深淵が覗けなかったこと。これだけの物語性があるのに、本人は飄々としている(エコールドパリでのあだ名がFOUFOUだから、フーフーかw)だからなのか、つかみ所がない感じがそのまま映画にも表現されていて、それがいいのかどうかは正直悩んだ。
本当に有名な絵画を観た印象そのもの。いいんだろうなぁと思い込むような、そんなありがたい話を聞いたような感じが拭いきれない。
特に、最後の壁画を映し出すシーンも、どんな気持ちで観ていればいいのだろうかと悩むのは、作者を勉強していない自分のせいだと自虐的に・・・
戦争画に積極的に加担していた原因で、戦犯扱いされ、全部引っ被り日本を絶ち、フランス帰化、そしてキリスト教の信者になったその辺りのドラマティックな流れがすっぽり抜けているので、現実はそんなものかなぁと一寸寂しさも感じてしまった。
ちなみに藤田の代表技法である「乳白色」のことも、もっと盛り込んで欲しかったと思うが、どこかのシーンで暗喩してるのだろうか?
相当、藤田嗣治を勉強、若しくは絵画に精通精通した人だったら、見応えがあったのかもしれない、人を選ぶ映画なのだろうと思う。