ストレイヤーズ・クロニクル : インタビュー
岡田将生&染谷将太が掲げる、俳優としての強い決意とは?
8年前の共演をきっかけに、気づけば良き友としてお互い刺激しあう間柄になっていたという岡田将生と染谷将太。「ずっと、また一緒に仕事がしたいと思っていた」──2人の思いは、アクション超大作「ストレイヤーズ・クロニクル」で実現した。(取材・文/新谷里映)
「将太とはドラマで共演したのをきっかけに仲良くなったんです。当時、僕が18歳で将太は15歳。年齢は少し離れているんですけど、映画を見に行ったり、お互い洋服や音楽も好きだったこともあって仲良くなって。その後プライベートで会っているかというとそれほどでもなくて。久々に会ってもなんか落ち着く存在なんです。肩肘張らずにいられるというか。僕、かなりの人見知りなんですけど、そういえば将太に対してはそれがなかったかも」
岡田の言葉に少し照れながら、染谷も「安心するんですよね。いい意味で一緒にいて楽なんです」。そこには2人だけに通じている“何か”が確かに存在しているが、今回の映画では同調というよりも反発しあう役どころでの共演となった。
ある極秘機関の実験によって2組の進化した子どもたちが誕生する。脳内ホルモンの操作で人間の限界を超える身体能力を発揮するグループと、遺伝子操作で違う生物の能力を持って生まれてきたグループ。大人になった、前者(チームスバル)のリーダー昴を岡田、後者(チームアゲハ)のリーダー学を染谷が演じ、人類の未来を決する壮絶なバトルが繰り広げられる。
望まぬ能力、限られた命、壮絶なアクション、希望と絶望など「いろいろなテーマがちりばめられているのですごく難しい作品だなと思いましたが、監督は『アントキノイノチ』でご一緒している瀬々(敬久)さん。その作品では将太とも共演しているので、瀬々監督のもとでまた将太とお芝居ができることが嬉しかった」と語るのは岡田。今回は主演俳優として初の本格的アクションに挑戦。「監督にしても、将太にしても、昔の自分を知っている人との仕事だからこそ、これまでと違う自分を見せたかった」と意気込み、一方の染谷は「岡田くんのアクションシーン、全部が格好いいんです。アクションしかり、悩みながらも真っ直ぐに戦う姿勢がとにかく格好いい」と称える。
岡田はアクションに挑むにあたって撮影の1カ月ほど前から体幹を中心に体を鍛えた。指導したのは「GANTZ」シリーズや「MONSTERZ モンスターズ」でアクション監督を務めた下村勇二氏で、「岡田さんはとてもアクションのセンスがある」と絶賛。確かに、これまでみたことのない岡田がスクリーンに映し出されている。しかし、本人いわく「僕はもともと体が硬くて……」と、苦労も多々あったようだ。
「アクション練習は柔軟から始めるんですけど、僕、体が硬いのでその柔軟の時間がすごく苦痛で、嫌で嫌で仕方なくて(苦笑)。でも、昴の強さはもちろん回し蹴りといった技をいかにきれいに見せられるかにかかっていたので、毎日柔軟をしてアクションに臨みました。また、スバルチームもアゲハチームもみんな突出したキャラクターばかり。各々のキャラクターによってアクションも変わっているのも見どころです」。そして、3秒先の未来が見え、見ただけですべての格闘技を修得する能力を持つ昴を演じきった。冒頭、ボーリング場のシーンで見せる昴の圧倒的強さは目を見張る。
染谷の演じる学の能力は、体内に致死率80%のウイルスを保有するというもの。「僕自身はアクションシーンがなかったので、それはもう岡田くんに任せて(笑)、学は青春担当だと思って演じていました」。この映画のドラマとしての素晴らしさを説明する。
「最初に台本を読んだときに感じたのは、これだけアクションが満載なのに青春映画としても胸をグッとつかまれたこと。すごいなって思いましたね。演じた学はずっと車イス。動きが制限されるなかで彼の役割は悲しみや怒りの象徴だと思っていたので、それをしっかり持つことでした。あとはその感情の吐きだし方。普通にやっても面白くないなと思ったので」。瀬々監督からの「素っぽい感じでいかれてくれ」という難しいオーダーに応えてみせた。
昴や学は特殊能力に悩み葛藤するが、人は誰でも「こんな能力があったらいいだろうなあ」と自分にない能力に憧れてしまうものだ。ちなみに岡田と染谷が欲しい能力は「人見知りをしない能力がほしい」「握力を強くする能力がほしい」そうだが、進化についてはどう捉えているのだろう。俳優としてどう進化(変化)していきたいのか。
岡田は言う。「進化したいかどうかは正直分からないけれど、いろんなことを吸収したいし、いろんな作品に関わりたいというのは昔から思っています。そういう意味では今回のアクションはものすごいチャレンジ、いい経験になりました。あと、壁ドンブームには乗り損ねちゃったけど(笑)、最近、恋愛ものをから離れているので、そろそろ恋愛映画をやりたいなって。将太は?」
「僕は、進化したくないですね。維持することが一番難しいって思っていて、維持するために歩み続けたいとは思うけれど、進化はしたくないし上にも行きたくない。ただ真っ直ぐに進んでいきたい」
「吸収していきたい」「真っ直ぐに進みたい」──言葉は異なるものの、ずっと俳優として生きていきたいという強い決意は同じだ。そんな2人が最後に楽しそうに語っていたのは「高校生はもう無理だと思うけど、大学生役とかで将太と一緒に学園ものやってみたいよね」「それ、いいね(笑)」という未来での共演について。もちろんそれは、この「ストレイヤーズ・クロニクル」での共演が素晴らしいものだったからこそ生まれる願望。日本映画界を引っぱる2人の演技バトルから、目を離すことができない。