劇場公開日 2015年7月25日

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人生スイッチ : 映画評論・批評

2015年7月21日更新

2015年7月25日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

他人の不幸は密の味!過激で悲劇的な痛快オムニバス・コメディ

なんなんだこれは! この面白さは!? あのペドロ・アルモドバルが惚れ込んで製作を買って出たというアルゼンチン最大のヒット作は、一筋縄ではいかない。実に衝撃の面白さなのだ。これまで見たことのないような、並外れてブラックかつ不謹慎、そして痛快なほど過激で悲劇的なオムニバス・コメディ。原題の英訳は「Wild Tales」だが、なるほど「人生スイッチ」という邦題はとても言い得て妙である。

独立した6つのワイルドな物語が描き出すのは、ふとしたきっかけで「ブチッ」と人生の不幸スイッチがオンに入ってしまった哀れな人々。「ファイナル・デスティネーション」における死神のような、「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造による「ドーン!!!!」にも似たスイッチだ。破滅へとものすごい勢いで転げ落ちていく彼らの醜態に「ひえーっ」とのけぞり、背筋を凍らせながら、その徹底したあり得ない不運の連鎖にもう、笑ってしまわずにはいられなくなる。そこまでやるかという振り切れ感がたまらなく、クセになるのだ!

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たとえば導入の第1話。飛行機に乗ったある男が美女に話しかけているうちに、トンデモない事態が明らかになる。オチも見事でワクワク感は一気に加速。第3話はもっとどぎつい。ド田舎を運転中、ノロい前車にイラついて追い越そうとした男がたどる道のりは、まさにホラー・コメディ。このオチも素晴らしい。だんだんとパターンが見えてきて、今度はどんな風に破滅していくのかと身構えていると、第6話で変化球がやってくる。人生の華であるはずの結婚式で、まさかの泥沼ズブズブバッシャバッシャ。意外なオチには賛否ありそうだが、そう来るか!? とビックリさせられる。

極端へと突き進む人間の愚かしさを笑いに昇華し、スパイスに毒をたっぷり盛り込んだ独創的な一皿に舌鼓。他人(ひと)の不幸は密の味だということを、監督はよぉくわかっていらっしゃる。しかも、ズルッ、ズルズルズルーーーーっとアクション・パズルゲームがハマったときのようなサイアクの連鎖&加速落下が超快感! これが歴代ナンバー1ヒット作品だとは、アルゼンチンは素敵な国に違いない。

若林ゆり

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