セッションのレビュー・感想・評価
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テンポの向こう側
ま~たとんでもない映画が出てきちゃいましたね。何もかもが異質でしょ。異質の塊。や、だって「ファッキンテンポォ!」なんて怒鳴り散らすおっさん、古今東西を見渡してもこの映画のJ・K・シモンズ演ずるフレッチャー教授だけでしょうから。まず結びつかないですよ。「ファッキン」と「テンポ」って。なんですかファッキンテンポって。もうこういう、些細な文句の端まで全部が異質で。異質さが常に、ずっとべったり張り付いておるんですよ。“異質”ってさっきから何回も言ってますけど。神経過敏になるというか、見てるこっちがね。
J・K・シモンズといえば、有名なのは『スパイダーマン』シリーズのジェイムソン新聞編集長で、自分としてもそういう認識で。あの編集長だなって、それだけで。
常に部下を厳しく叱りつけるんだけど、少しユーモアというかコミカルでもあったあの編集長のおじさんが、こんな理不尽サイコパスに変身しちゃうってのが、いや役者って凄いなあと思わされもしてですね。うん。
で、このフレッチャー教授。「シャッファー音楽学校の名指揮者で、自分のスタジオ・バンドで生徒を人間扱いせず、日々扱きまくっている」という設定で、あの『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹を思い浮かべる方も居られると思うんですよ。あの理不尽鬼教官。口汚く訓練生を罵る人。フレッチャーの扱きっぷりは確かにあれクラスと肩を並べてます。でも、なんていうか、ハートマンは訓練生達を一人前に育てようとか、少なからずとも愛情みたいなもの、その片鱗はあった訳ですよ。
しかし、しかしテレンス・フレッチャーという男。愛情、思いやり、その類、一切なし。甘い言葉を掛けたと思ったら突然パイプ椅子を投げ付ける予測不能な気性の持ち主。兎に角、気に入らなきゃ暴力に訴えるし、容赦なく生徒を見限るし、叫ぶ、怒鳴る、いじめる。まさに教室は地獄絵図。理不尽。理不尽の洪水。
映画史に燦然と輝くだろうこと間違いなしの、名悪党の誕生です。
そのフレッチャーの鬼扱きにも負けず、必死に食らいついてくのが主人公のネイマン君。名ジャズドラマーを目指して、過剰な扱きにも猛烈耐える耐える。耐えまくる。
手指を血だらけにしながらもスティックを握る姿は気迫がみなぎり、やがては目に下に隈を作り、柔和だった顔つきがみるみると尖っていく。もうね、彼にもフレッチャー同様に、ある種の異質感を覚えるんです。ああこりゃどっちもだっちだなと。
そこから鑑賞しながら段々と「ん?ちょっと待てよ」となってですね。
その師弟関係だけで引っ張るのか?となってきて。サイコパス教授のキャラクター性は確かに面白いんだけど、正直、観客からしたらずっと悪質指導を見せ続けられて、かなりフラストレーション溜まってんですよと。おいおい、いい加減にしろよ?となったところでの……あのクライマックス!あのセッション!あのラスト!
うおおおおおおお!?!?目が離せない、手に汗握る、固唾をのむ、の全部をやってしまいまして、自分。
もうなんでしょうか。こう来たか、と。ほぼ全編を起爆剤に使ってたんですね。最後の最後でエクスプロージョンさせる為に。最近の映画だと『ブラック・スワン』に近いやり方。溜めて溜めて、解き放つ。
鬱憤とか怒りとか復讐とかそんなチャチなもんじゃないんですよね。あれが狂気。あれこそが狂喜。凶器。
上映が終わり、席から立つ瞬間、思わず大きな溜息が出ちゃいましてね。凄いもん観たと。やあ~……やあ~、やられました。
皆さんも!ぜひ!劇場で「ファッキンテンポ!」しちゃってください!
闇から生じる光
現代の映画
言葉は凶器になり、音楽は武器になる。
トップを獲りたい人間にとって情など必要ない。一流を目指すものにとって妥協など論外だ。例えチームワークが求められる楽団であっても、一人一人のパフォーマンスが完璧でなければトップは獲れない。要は戦いだ。
己と戦い、限界に挑む。これはそんなベタな映画じゃない。敵はあくまでも他者だ。指揮者という他者だ。敵は巧みな言葉で攻撃してくる。時には罵声、時には嫌味、言葉は凶器と化す。どんなに傷つけられようとも、どんなに追い詰められようとも、その相手を打ちのめすほどのパフォーマンスができなければ自分がやられる。勝つには音楽という武器を使って反撃するしかない。これはヒューマンドラマでもなければ、スポ魂ものでもない。トップを目指す者とベスト以上を目指す者とのアイデンティティをかけたアクション映画だ。
主人公の心を切り裂く言葉のナイフが劇中を飛び交う。ドラムという名の銃声が劇場に響き渡る。鋭いナイフと無数の弾丸が観客の感性を蜂の巣にする。何て恐ろしい映画だろうか。何て素晴らしい映画だろうか。見終わってからの興奮が未だに収まらない。監督のデイミアン・チャゼルは若干30歳。ハリウッドにとんでもない新星が現れた。
一生忘れられない映画
参りました
かっこいい! 映画館で観てよかった。ラスト、思わず拍手してしまいそ...
「狂う」が「面白い」になる時に「映画」になる
一言「狂っている」。
ある意味「トレインスポッティング」や「ウルフオブウォールストリート」のような狂っている奴が主人公のケースとは似ているが、それとはまた一線を画している。
この映画では「狂気 vs 才能」と銘打っているが、ある意味「狂気 vs 狂気」である。
麻薬ナシでぶっ飛んだ男たちがいるからこそ感情移入でき、こっちまで心がぶっ飛ぶ。
ドラマー版「ブラック・スワン」とも言われてるが、それよりかは狂ってる。
だから女性はあまり共感できないかもしれない。
しかしラスト9分はここまで面白く、ここまで痛快か、と愉快になる。
これが映画。そしてあのエンド。
映画の醍醐味がそこにはある。これを映画と呼ばずして何と呼ぶ?
途中席を立ち上がりそうになるほどのエネルギッシュな映画、是非一見するべし。
麻薬のような映画。 この作品と同時期に公開した「ビリギャル」。こち...
出ました!今年暫定1位!!
ちょー話題作をTOHOシネマズシャンテでようやく鑑賞。
これはぜひ、大画面・大音量の劇場で観て欲しいです。
てか、劇場で観ないと、この映画の良さは半分も分からないかもしれません。
映画が終わったと同時にスタンディング・オーベーションするのを、必死で堪えました!
この映画では、言葉はいつも一方通行。
自分の訴えを叫ぶだけで、交流など生まれない。
しかし、心の底からの演奏で初めてセッションが生まれ、分かち合える!
道徳的ではない正論や、
極限への挑戦、
挫折からの再起などなど、
大好きな要素がてんこ盛り!
邦題「セッション」に対しての異議も聞きますが、
自分は「鞭打ち」のその先まで含んだ日本人的な解釈で、共感がもてました。
毎度毎度、いろんな映画を観る度に「面白い!」って思うけれど、
久々に心からの快作を観れた!
素晴らしすぎる!!!
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