「喰らいつく」セッション 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
喰らいつく
クリックして本文を読む
鬼軍曹に見せかけて、実は良い先生…そんなありきたりなオチを予想していたのだが、さにあらず。その映画的ハッタリが凄まじく面白い。
先生が、ほんっとに悪いヤツだと思った。
途中、実はイイ奴っぽいセリフが差し込まれているが、それすら全部ウソ。殴るのも大概だけど、ウソで人をコントロールするあたりが、立派なサイコ。
この人、生徒を育てる気もなきゃ、音楽よりも、エゴを優先するどうしようもないヤツ。鬼軍曹のアッパレ教育論の映画では無い。糞野郎の映画。これ、糞野郎に喰らいつき闘う映画なんです。
喰らいつく方も大概な所があって、二人のやり合いは、音楽のためなのか、復讐なのか、段々に分からなくなっていく。
肉を切らせて骨を断つ、じゃなくて、骨を切らせて骨を断つような争い。
最後、互いに捨て身で臨んだセッション。
セッションというよりは果し合い。
殴り合いにも似た音の応酬は、何を生むのか?いや壊すのか?
最後の最後で、音楽は、先生のエゴを打ち砕く。
生徒の恨みも吹き飛ばす。
何もかも、なぎ倒した先にあるもの。
そこには「音」しか残らない。「音」以外、何もいらない。
純粋で、まっさらな瞬間。
そこに痺れた。揺さぶられた。
言葉なんていらない、ものすごいパワーのある映画だと思った。
—
追記:
JKシモンズが悪魔的魅力を存分に発揮。あの、ひじ直角な感じに痺れる。
--
追記(2015.5.11)
敬愛するレビュアーさんが
「ハゲがクライマックス、コロッと表情を変えるのだが、それも虚か実か、結局分からない。分からないからこそ、キュン、とくる」と書いてて、おっしゃる通りだなあ、と思った。
コメントする