「時代を超える傑作」セッション くめいさんの映画レビュー(感想・評価)
時代を超える傑作
もともと好きな作品で配信で三回視聴済み。今回は4Kリマスターを映画館で観れるということで地元での公開を待って鑑賞。
スクリーン越しにこちらが委縮してしまうフレッチャー教授の圧と、追い詰められていくニーマン。随所にちりばめられたアップテンポで明るいなジャズ・ナンバーはギリギリで均衡を保っているキャラクターの精神とは対極なのだけれど、逆にそれがコントラストとなって両方を真に迫るものにしている。
特にラストシーンは何度も観たのに劇場の迫力もあってか呼吸を忘れて見入って(聴きいって)しまった。盛り上がり、痛快でもあり、私が観た映画の中でもトップクラスに格好いい締めだ。
終盤で『時代がジャズを弱くした。このままではもう天才は生まれない』というような意味合いのセリフが語られるのだが、さまざまなハラスメントが濫用されつつある現代にそれは当てはまるし(ジャズに限らず)、それが使われなくなっていくというのは基本的にないと思う。
それゆえにこの作品は今、そして今以降の時代において一種のノスタルジーと普遍性を保つことができるだろう。
デジタル4Kリマスターは初めて鑑賞したが、期待していたような画質の向上は感じられなかった。ただ色合いのコントラストは強調されていたような気がする。
最後に、これは本作のレビューから逸脱してしまうのだが、本作の低評価を読んでみると劇中のキャラクターの心中を想像したり、技法や描写に思惟することもなく『画面のこちらの自分がどう思うか』だけで完結させるものがある。
これは観る側の質によるものだと思うが、最近とみに増えているように感じる。ぜひご自身で評価されることを勧める。