劇場公開日 2025年4月4日

「圧倒的な没入感に大興奮 でもシンバル投げ伝説を持ち出されてもね……」セッション Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0圧倒的な没入感に大興奮 でもシンバル投げ伝説を持ち出されてもね……

2025年4月9日
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鑑賞方法:映画館

ご存知デイミアン•チャゼル監督の出世作。私は最初に見たとき、これはすごい、大傑作だと大いに興奮したものですが、鑑賞直後の興奮から醒めると、結局は暴力礼賛じゃないの、いろいろとやり過ぎてるし、といった、内容に対する嫌悪感がふつふつと湧いてきて、あれはいったい何だったのだろうかと思うようになっていました。私のこの作品に対する評価は大きく揺らいで今を迎えております。

再鑑賞を前にして、私のこの作品に対するスタンスをQ&A形式で示すと下記になります。
-傑作と思うか?: イエス。傑作には違いない
-ひとに薦められるか?: イエス。薦めて鑑賞仲間を増やして、この作品についていろいろと語り合いたい。ただし、薦めるひとは選ぶかもしれない。
-好きか?: ノー。同じ監督の作品なら『ラ•ラ•ランド』のほうがはるかに好き。
-自分の生涯お気に入り映画のリストに入るか: ノー。絶対に入れたくない。今回がこの作品の生涯最後の鑑賞になるかも。

ということで、見てまいりました、公開10周年記念デジタル•リマスター版の上映。どうだったかというと、まあ、なんというか、つまり、そのぉ……いいっ!! いきなり首根っこを押さえつけられてスクリーンの中に引きずり込まれたような没入感を味わい、クライマックスまで息つく間もなく一気に駆け抜けました。やはりタダモノではないですね。体感時間が非常に短い、極上の映画体験でした。

やはり初回鑑賞時の記憶があやしくなっていたようで、今回、少し認識を新たにした部分もあります。最初に見たときには、主要登場人物のふたり、フレッチャー(J.K.シモンズ)とアンドリュー•ニーマン(マイルズ•テラー)の行動の原動力となっているのは、完璧なジャズを目指しての、もっと芸術至上主義的な側面寄りの何かだと思っていたのですが、今回見た感じでは実際にはそういった面もあるにせよ、エゴやプライドといった、もっと人間臭いどろどろとした何かではないかと考えるようになりました。まあ、ふたりともエゴが強くてプライドが高いですからね。ということで、初回鑑賞時はより良い芸術を生み出すためにちょっと違ったゾーンに入ってしまった人たちの物語みたいな受け取め方をしていたのですが、今回はニーマンの上昇志向やふたりの間の私怨、そのもととなっているエゴやプライドに目が行って、思ってたより人間臭い話だったんだなと思うようになりました。二回の鑑賞で共通しているのは圧倒的な没入感と鑑賞直後の大興奮です。

今回の鑑賞で気づいたことは他にもあって、私がこの作品のことを好きになりきれないのは、この作品がファシズムとか反知性主義とかいった、いかがわしくて怪しげな何かを持ち合わせている感じがするからだと思いました。チャーリー•パーカーはシンバルを投げつけられなくとも偉大なサックス•プレーヤーになっていたと信じたいです。まあでも面白かったし、これが生涯最後とか言わず、また見たくなるかも。

Freddie3v
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