「音楽の悪魔に魂を売った男たちの物語。」セッション たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽の悪魔に魂を売った男たちの物語。
偉大なジャズドラマーになる事を夢見る青年アンドリューが、高名な指導者フレッチャーに常軌を逸したトレーニングを叩き込まれ、次第に狂気的な世界へと足を踏み入れていくというサスペンス音楽映画。
監督/脚本は『グランドピアノ』の脚本家で、後のオスカー監督であるデイミアン・チャゼル。
主人公アンドリューを演じるのは『プロジェクト X』『ダイバージェント』のマイルズ・テラー。
フレッチャー教授を演じるのは『スパイダーマン』シリーズや『ジュノ』のJ・K・シモンズ。本作でオスカーを獲得。
👑受賞歴👑
第87回アカデミー賞…録音賞・編集賞・助演男優賞(シモンズ)の三冠を達成‼️
第72回ゴールデングローブ賞…助演男優賞(シモンズ)!
第30回サンダンス映画祭…グランプリ・観客賞の二冠を達成❗️
第68回英国アカデミー賞…音響賞!
とても高い評価を獲得している本作。
狂気的な指導を行う音楽大学の教授と、彼に従事するうちに自らの内に眠る魔物を揺り起こしてしまったドラマーの青年の、常軌を逸したジャズ映画。
本作の監督であるデイミアン・チャゼルがこの作品を作ったのは弱冠28歳。この年齢でこれだけのクオリティの映画を製作するとは、なんとも恐ろしい才能と情熱を持った人物だと思いました。
本作を傑作たらしめている大きな要因は、間違いなくJ・Kシモンズです。音楽大学教授フレッチャーの気狂いじみた人物像を完璧に演じ切る彼の演技力の高さに驚かされました。
フレッチャー教授は下手をすると現実味がなくなってしまうほどイカれた性格と行動の人物なのですが、J・Kシモンズの演技力によって驚くほどにリアリティーを持ったキャラクターとして存在していました。
フレッチャー教授は主人公を導くメンターとしての役割と、主人公に立ち塞がるヴィランとしての役割を果たしています。
このオッさんのキャラクターが素晴らしく面白い!始めはいきすぎた指導に恐ろしさを感じるのですが、あまりにめちゃくちゃすぎてついつい笑ってしまう場面もありました。
天才的なジャズマンを育てることを目的として厳しい指導を行なっていると言っていますが、果たして本当にそうなのか?
彼の狂気に満ちた行動には、もはや理由は存在していない…映画を観ていてそう感じました。
フレッチャー教授の日本語吹き替えは名優壤晴彦さんが担当。悪役をやらせればこの方の右に出るものなし!気持ちの良いほどの切れ味を持った罵倒の数々に、思わず聞き惚れてしまいました。
本作の主人公、ニーマンを演じたマイルズ・テラーも素晴らしかった。
ニーマンは、はじめはいかにもお坊ちゃんという人物だったが、終盤に向かうにつれて狂人めいた人格に変貌して行く。その様は恐ろしくもあり哀しくもあり…
そんなニーマンの成長過程を見事に演じ切ったマイルズ・テラーに拍手!この映画のため、血が滲むほどドラムの練習をしたそうです。
全体的に黒を基調とした色彩で画面が構成されているため、非常にシックな印象を受ける映像は美しい。
家族の絆や恋愛が、音楽によって引き裂かれて行く様を非常に簡潔かつ印象的に描いている。
これらの描写を必要最小限で留めているため、間延びのないスマートな映画となっている。
クライマックスの演奏からのエンドロールが流れるタイミングはまさに完璧!ついつい拍手をしてしまうほどの美しさでした。
夢を叶えるために、これ程の代償を払う必要はあるのか?人間性を捨ててまで叶えたい夢とは、もはや呪いと言うべきではないのか?
この映画では、夢を追う人間は幸せにはなりません。
しかし、全てを投げ打ち何かに邁進する人間の狂気性と美しさがありありと描き出されており、少しも画面から目を逸らすことが出来ませんでした。
ジャズにはあまり関心がなく、詳しくもないですが、それでも十分に引き込まれました。
全く欠点のない、完璧に近い映画だと思います。それだけに少し綺麗に纏まりすぎていると感じてしまうところもありましたが、後世に残る傑作であることは疑いようもありません。
観た人間の心に火を灯す、闘う者のための映画です!
talisman様
コメントありがとうございます😊
フレッチャー先生は下手なホラー映画より怖いですよね(´Д` )
個人的な付き合いは絶色したくない(笑)