「天才と狂気は紙一重なのかも?」セッション しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
天才と狂気は紙一重なのかも?
レンタルDVDで鑑賞(字幕)。
妥協無しの「究極」を追い求める音楽教師と、それに必死で食らいつこうとするドラマーを目指す学生との壮絶な戦いに息を呑みました。重厚な心理戦に目を見張りっぱなしでした。
J・K・シモンズ演じるフレッチャーの鬼気迫る演技は本当に怖かったです。平気で罵声を浴びせ、相手の身内を罵ることもなんのその。椅子だって放り投げちゃう。指導者として行き過ぎた行為の数々でしたが、「既定の概念をぶち破らなければ天才は生まれない」と云う自らの理念を実践するための過激なレッスンにただただ圧倒されました。しかし、鬼かあんたは…
茫漠とした壮大な夢を抱いているマイルズ・テラーの変貌も凄まじい限りでした。徹底的な屈辱を与えられ、フレッチャーを見返そうと血の滲むような練習を積み上げ、実力とそれに裏打ちされたプライドを磨き上げましたが、増長したことで惨憺たる結果に。若さ故の迷路に入る姿は青春だなぁ…
観念を叩き壊そうとする勢いに頭がクラクラしました。天才と狂気は紙一重なのかもしれないなぁ、と…。人間の持つポテンシャルを限界突破した先に、ふたりの和解がありそうな気がしました。究極的な師匠と弟子の関係のように思えました。
クライマックスの演奏シーンに惹き込まれました。お互いを喰い合った末に、弟子が辿り着いた境地に歓喜の表情を浮かべたフレッチャーの「やったった感」がすごい…(笑)。
本作の大成功で一流監督の仲間入りを果たしたデイミアン・チャゼル監督の手腕とストーリーテリングがお見事。自身の体験を反映させた規格外な物語が素晴らしいの一言です。「ラ・ラ・ランド」も秀逸でしたが、個人的には本作の方が好きです。初監督作ならではのパッションが感じられました。
※修正(2024/06/18)