「死亡フラグの立ってる主人公の哀愁」ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
死亡フラグの立ってる主人公の哀愁
面白かった。やっぱりトムクルーズは別格って感じがする。
カーチェイス、バイクチェイスは本当に緊迫感があり、最近のアクション映画にありがちな、カメラが動きすぎて何が起こってるかわからない、ということもなかった。
CGやカメラワークに頼らない、本物の危険な映像。
ストーリーも奇想天外さはあるものの、抑えた演出でぎりぎりのリアリティをねらってる感じ。全体に上品。007的な。
ただ、最後の方に出てきた、プスっと刺されるとなんでも自白しちゃうお注射は、なんか都合良すぎてもう少しなんとかなんないのかな、と思った。
今回出てきたニューヒロインは、役者自体にはあまり魅力を感じなかったけど、役回りはルパン三世の不二子みたいで面白かった。
イーサンの惚れた弱みにつけこんだ立ち回りや、敵か味方か分からないスリリングさ。本音はわりと良い奴っていうお約束。
彼女の出した三択が良かった。
1. 失うものが多い常識的な幕引き
2. このまま「賭け」を続ける
3. 何もかも捨てて2人で消える
イーサンが選択を悩むのも良い。
彼はミッションインポッシブルをこなす無敵のヒーローというわけではなく、実は失敗したときの恐怖ももっている、悩みの多い人間。
この三択は、MIシリーズの核を突く問いだと感じた。
「このまま危険な賭けを続け、いつか破滅するのか」というのも、冒頭のシチュエーションで問われたこと。
ある種、イーサンにはすでに死亡フラグが立ってる。英雄は悲劇的な最期を迎える、というのは古今からのお約束。
それでも賭けを続ける人生をやめられない、抜けられない、というのが彼の悲しさであり魅力なんだと思う。イーサンというよりも、トムクルーズが自分を重ねてこの主人公を演じている気がする。
ローグネイション(ならずもの国家)ってのはなんのことなのかな、と思ってたけど、敵のシンジケートでもあるし、アメリカやイギリスのことでもあるんだろう。
諜報部員、スパイ、忍者。彼らは正義のためと信じ、人を殺し続けるんだけど、結局最後は自らの組織に裏切られる、みたいな古典的な話を思い起こされる。
もう、国のために命を賭ける時代じゃない。国のためじゃないんだとしたら、何のために命を賭けるのか。
友人のために命を賭ける。すごくシンプルな解答。