「知力も体力も最高潮!な『スパイ大合戦』」ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
知力も体力も最高潮!な『スパイ大合戦』
5作目にして『シリーズ最高傑作』とやたら
前評判の高かった本作だが、鑑賞すればなるほど納得、
スッゲー面白かった!
1作目を彷彿とさせる優雅なロケーションと、
敵味方の読めない三転四転するプロット、
2作目のトムクル・スタントを凌ぐ満載のアクション、
3作目で感じられたチームプレーの一体感、
4作目の疾走感あるテンポと小気味良いユーモア、
それらが絶妙な具合でブレンドされている本作は、
いや出来過ぎだろッと言いたくなるくらいに良く出来ている。
まさにシリーズ集大成!な出来なんである。
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とにかく見せ場見せ場の連続なのだが、どの見せ場も
趣向が全く異なっていて、132分という長めの上映時間
でありながら、緊迫感とワクワク感が少しも途切れない。
話の流れが分かると楽しみが半減しそうなので以下は順番バラバラに書いているが――
潜水ミッションのシーンでは、観ているこっちまで
息苦しくなりそうな秒刻みのサスペンスが堪らない。
ああああベンジー、もっとゆっくり!とか言いたくなる。
艶のある夜の映像がステキな市街大逃走戦では
爆発もCGもナシだが、多勢に無勢な状況を咄嗟の機転や
アナログな肉体派アクションで乗り切る姿に燃える!
歌劇場でのシークエンスは舞台も衣装もゴージャスな上、
奇抜な改造銃などのスパイガジェットもガンガン登場。
「誰が◯◯を狙っているのか?」「どうやって止めるか?」
という王道なサスペンスの煽り方も素晴らしかった。
話題の上空1500m飛行機しがみつきとかノーヘル・バイクチェイスとかは、
トムクル本人が演じていると思うと観ていて恐ろしいくらい。
やっぱこの役者さんハンパじゃねえな、とつくづく感心。
きっと撮影スタッフの方は「大スターを死なせたら
どうしよう……」と心臓バクバクだったんじゃなかろうか。
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んで、これだけ書いてもまだ見せ場が残っているという凄まじさ。
アクションシークエンスの上手さもだが、それ以上に
まるで先読みできない複雑なシナリオが素晴らしい。
映画全体のサスペンスに特に貢献しているのが、イルサとレーンの2人+α だ。
レベッカ・ファーガソン演じるイルサが根っからの悪党
で無いことは観客も感じ取るはずで、そうなると
「なんだかんだで味方っしょ?」と安心してしまいそうな所。
だが、イルサは危うい。
彼女は彼女の意思とは無関係に動かざるを得ないという
状況に追い込まれている。なので行動が殆ど読めない。
とんでもなくタフだが脆さや哀しさも滲ませる名ヒロインだった。
そして、ショーン・ハリス演じる最大の敵レーン。
コイツがホント悪いヤツ! とにかく冷静で冷徹で冷血で知略に長ける。
主人公イーサンは殆ど超人だが、そんな彼でも
チームが始動するまで彼には出し抜かれっぱなし。
相手の行動パターンや人間的な感情を巧みに読み、
常に先回りする彼は、シリーズ屈指の強敵だ。
それだけに、あの皮肉タップリなラストは痛快そのもの。
+α ? それは当然ベンジーである(笑)。
アクション&サスペンスばかりで緊迫感がパンパンに
張り詰めっぱなしだと疲れてしまうが、絶妙なタイミングで
ユーモアを挟んでくる彼が適度なガス抜きになっている。
画面に登場すると何かひとボケかましてくれるので
なんかもう顔を見るだけで楽しい(笑)。
「指図するな、俺はアンタの友達だろ!」と
珍しく怒りをあらわにする場面にもジーンときた。
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前作『ゴースト・プロトコル』は『1』に次ぐ秀作だったと僕は思うが、
本作『ローグ・ネイション』はその高いハードルをさらに越えてきた。
シリーズを重ねるごとに進化を遂げる稀有なシリーズだ。
面白い映画を作ることには決して妥協しない製作者トム・
クルーズ、ならびにスタッフの気合をビシバシと感じる。
シリーズファンにもサスペンス好きにもアクション好きにも全力でオススメします。
見事な出来です。
<2015.08.07鑑賞>
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余談:
好きな方には申し訳ないが、本作の監督クリストファー・
マックァリーとトムクルがタッグを組んだ『アウトロー』は
個人的にはちっとも楽しめなかった映画だった。
なので実は本作に対する期待も僕は薄かったのだけど……
やっぱ1、2作品だけじゃそんなのは判断できないもんすね。
そもそもマックァリー監督は『ユージュアル・サスペクツ』
や『ワルキューレ』といった傑作秀作の脚本家なワケで。
サスペンスを心得た方が監督としての手腕も付けてきた
とするなら……これからの彼の監督作がちょっと楽しみ。