獣人(1938)のレビュー・感想・評価
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性格悲劇
原作はフランス小説家のエミール・ゾラ。
オープニングにゾラの文章と署名が出てきて、気づきました。
主人公ジャック(ジャン・ギャバン)は遺伝子的疾患が原因で、本人の意識のないまま、女性を殺人したい衝動に襲われ本当に実行に移してしまうという。ジャックがいつ本性を出す(獣人になる)のかと、見ていてヒヤヒヤしました。
列車内で駅長(フェルナン・ルドウ)とその妻セブリーヌ(シモーヌ・シモン)が養父を殺害。たまたま、ジャックがそれを目撃してしまうのですが、セブリーヌの美しさに惹かれたジャックはそのことを口外しない。セブリーヌはジャックに自分の夫殺しを計画してジャックに依頼を持ちかけるが、なかなか、実行には移せない。結局、彼の遺伝子的な特質が突如と顔を出し、愛するセブリーヌの首を締めて死に至らしてしまう、という話です。性格悲劇というんでしょうか。
男女の三角関係と殺人のような展開のストーリーなのですが、映画の画角は非常に男性的。オープニング、機関車が走り抜けるシーンが印象的。ジェットコースターの先頭に立ったような危険な気分になりました。ラストも機関車が暴走します。不穏な空気と嫌な予感が伝わってきて、ジャックは機関車から投身自殺をしてしまいます。終盤の機関車の暴走はジャックそのものの心象風景であり「苦悩ゆえの死」を表していたのかなとも思いました。
それにしても、スーツを纏った普通の紳士の姿よりも、油と石炭で汚れきった機関士姿の方がはるかに魅力的でした。「リゾン」(自前の機関車)が自分の恋人だと言って、機関士の仕事をこよなく愛したジャック。セブリーヌに出会わなければ、こんなことにはならずに済んだのに。
蒸気機関車の映像が凄い!
戦前の映画なのに特撮(?)技術が優れていた。ちょっと何キロで走ってんのよ!と思うくらいにスピード出している。そんな中、機関室では石炭まみれ、油まみれになって働く、ジャック・ランチェたち機関士。 そんなジャックはある病気の遺伝子を受け継いでいる。なんと女性を殺したくなる衝動に駆られる発作なのだという。最初は養母の娘であるフローレンスに手をかけようとするが、寸前で思いとどまる。とにかく、好きになった女性を絞め殺す病気らしい・・・おいおい。 昔の俳優は顔がデカいほど目立ったんだろうな~と思えるシモーヌ・シモンとのツーショット。女優の小顔もあるだろうけど、やっぱりデカいほど色男!って感じ。ジャン・ギャバンも例外ではない。キスシーンもとろけるような雰囲気でぼかしが入ってるようだけど、これがまた殺意に変わるのです。甘さと憎々しさを兼ね備えた男優なんてなかなかいませんよね。 ストーリーはともかく、寝取られ男がなぜかパッとしない。病気の男の哀愁がメインだったのかもしれないけど・・・ほんとに病気?
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