劇場公開日 2015年6月6日

「まるで2本分以上の 新しい体験。」予告犯 年間100本を劇場で観るシネオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0まるで2本分以上の 新しい体験。

2015年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

原作未読ですが、
早い時期からやっていた劇場予告で、
かなり期待して観ました。
理不尽な世の中に復讐する
クライムサスペンスかと思っていたら、
見事に裏切られてニヤリ。

「どんなに小さなことでも、
誰かのためになると思えば人は動く。」
原作がとにかく良くできている。
結末を予想させない、演出が上手い。
そしてポスターや予告篇の作りが、
確信犯的、作為的で憎い。
プロの仕事を感じました。

こんなにあたたかい
気持ちになれるサスペンスは、
もちろん初めての体験。
ふざけた日本の派遣制度にイラついて、
社会の孤独に切なくなって、
ネット社会が怖くなって、
展開にドキドキして、
愛情にホロリとして、
エンドロールでは爽やかな気持ちになれる、
まるで二本分の映画が楽しめる、
凄い構成です。

キャストが皆素晴らしい。
生田さんは恐ろしいキャラで
観客を置き去りにすると思ったら、
終盤は全員を味方につけている。
難しい役柄を、
深みをもって見事に演じきっていました。
メタボ役の大好きな荒川さんも、
さすがの存在感。
戸田さんも鈴木さんも濱田さんも、
ストイックな役作りでした。

公開3日目の新宿、
19時の回で観客はまばら。
みんなトゥモローランドに
流れてしまったのでしょうか。
けどこんなに邦画の傑作を、
見逃ししたらもったいないですよ。

年間100本を劇場で観るシネオ