劇場公開日 2015年6月6日

「そこのみにて光輝く」予告犯 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0そこのみにて光輝く

2015年6月5日
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鑑賞方法:試写会、DVD/BD

泣ける

悲しい

興奮

ネット上に突如現れた、新聞紙を被った謎の覆面男“シンブンシ”。
社会の悪への制裁を予告し、そして実行する…。
同名コミックを中村義洋監督が映画化。

イタチごっこのようなシンブンシと警視庁サイバー犯罪課の攻防はハイテク・サスペンスの趣向。
路地裏チェイスはなかなかの臨場感。
エンタメ・サスペンスとしても充分面白いが、社会派の一面こそ見応えあり。

シンブンシを面白おかしく賛同したり、あれこれ言いたい事を言ったり。
ネット社会への痛烈批判は中村監督の昨年の監督作「白ゆき姫殺人事件」と通じるものあり。

シンブンシの背景になるが、社会の最下層で悶えながら生きる人々。
正社員と派遣の格差。あのIT会社はブラック会社だ!
職安に言っても仕事が見つからず。自分も就職には苦労したので、つい当時を思い出してしまった。
違法破棄作業場は衝撃的でもあった。人間を人間として扱わないあんな所が本当にあるのか。

シンブンシは複数犯。
ネタバレというほどでもないが、4人+αのドラマが本作の要。
見てると彼らに何が起こり、世間を騒がす彼らの動機も薄々勘付くが、目頭を熱くさせる。
一見ハード・サスペンスで内は情がこもったドラマは韓国映画を彷彿させた。

生田斗真が異色のダークヒーローを熱演。
岡田准一が日本アカデミー賞をW受賞して話題になったが、ジャニーズにはもう一人演技派が居る事を忘れないで欲しい。

戸田恵梨香がサイバー課のエリート捜査官で課長という設定は合うか合わない別として、年上男部下にビシバシ命令する“ドS刑事”振りは結構格好いい。
それにしても、戸田恵梨香の可愛い顔から「○○の○に○○○○○○ぶち込まれたのね」なんて台詞を聞くとは(笑)
(戸田恵梨香演じる絵里香はシンブンシと似た過去。ここをもうちょっと掘り下げれば、クライマックスの涙も効いたと思うが…)

シンブンシのメンバーに、鈴木亮平、濱田岳、荒川良々という食指が伸びる個性派・演技派の面々。
生田と彼らこそが主役だ!

彼らの動機・目的は“たったそれだけ”。
たったそれだけの事で誰かを傷付け世間を騒がした彼らの罪は許されるものではない。
しかし、決して見て見ぬふりしてはいけない“たったそれだけ”。
社会のどん底で出会った男たちの絆はかけがえない。

そこのみにて光輝く。

近大