「直感的に、「頑張れるだけ幸せ」ということにピンとくるかどうか」予告犯 marumeroさんの映画レビュー(感想・評価)
直感的に、「頑張れるだけ幸せ」ということにピンとくるかどうか
タイトルからは、頭脳的なサスペンスがメインの話のように思われるが、本作の魅力的なテーマの一つは、その根底にある社会問題への問いかけといえるでしょう。
この点については、しっかりと描かれていると〈個人的には〉感じました。
私自身、はっきり言って社会の底辺に近いところで生きています。少なくとも映画を楽しむことができるだけ、自身を不幸だとは思っていませんが。ともあれ、まさにゲイツのような経験もしたし、間違いなく"シンブンシ"寄りの社会的立ち位置にあり、観ていて息が詰まるほど苦しくなりました。
劇中のセリフにもありました、「頑張れるだけ幸せ」ということを、重く感じ取れる人、なんとなくでも直感的にピンときてしまう人は、本作に共鳴できるところはあると思います。それが良いかどうかは別にして。
観客の価値観によって、というか、観る時に自身が置かれている境遇によって、評価が変わってくるように思います。
もう一つ、本作の最大の魅力となるのは、友情を描いたヒューマンドラマの部分です。
これをもってして、犯罪の動機に深く迫っていく展開は非常に面白く、また感動的です。私は泣きました。
社会派テーマとヒューマンドラマ、これは本当に素晴らしいと思います。
しかし、いや、だからこそなのかもしれません、冒頭に書きましたタイトルとサスペンスについて、ここがどうも中途半端になってしまったように感じます。
まず、『予告』が示すこの物語における意味、意義は、クライマックスにおいて単なる犯罪予告ではない行動の真意という意味で最大に有効的ではあるものの、全体を通してサスペンスという部分でみれば、それこそ意味として弱い気がしました。タイトルにしたことで逆に邪魔に感じてしまいました。
また"シンブンシ"に、つまり"新聞紙"を被ることの意味にも、いま一つ魅力を感じません。
社会派テーマとヒューマンドラマ、これらとサスペンスとしての部分とをまとめる構成が、緊密性に欠け中途半端であり、残念に思うところです。
