「【サスペンスとしての見応えとヒューマンドラマとしての切なさが織りなす見応えのある作品】」予告犯 3104arataさんの映画レビュー(感想・評価)
【サスペンスとしての見応えとヒューマンドラマとしての切なさが織りなす見応えのある作品】
・2015年公開の日本のサスペンス映画。
・ある日突然ネット上に現れた新聞紙を被った男(生田斗真さん)は「明日の予告を教えてやるー」と犯罪予告をし、それを体現する。犯行の対象は法で裁かれないが身近で人を傷つけたりすような人々。そのうちに世の中から「シンブンシ」と呼ばれ人気を集め、次第には模倣犯まで出る程の社会現象に。それを追うサイバー犯罪対策課の吉野(戸田恵梨香さん)。シンブンシの犯行の目的は一体何なのか、どのような結末を迎えていくのか という大枠ストーリー。
※鑑賞後に知りましたが、漫画原作の映画のようですね。ただ、漫画を知らなくても、いやむしろ知らない方が楽しめるかもしれません。
[お勧めのポイント]
・結末を予想できないサスペンスとしての見応え
・切なすぎる物語
・絶望の中にも希望を見出す台詞
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[物語・演出]
・物語の導入は第三者の視点で「シンブンシ」を謎めいて魅せ、序盤で「シンブンシ」の視点に変えて彼の過去や現在の状況を魅せ、中盤で「シンブンシ」の動機を徐々に明かしていき、終盤には衝撃と切なさをしっかり与えられるように魅せる部分と魅せない部分をしっかり分けて、ラストで落としてくれる。いやぁ、素晴らしかったです。何気なく選んで視聴した映画でしたが、まずサスペンスとしての満足度がかなり高かったです。
・さらに、終盤戦では涙なくして観れない切なさが潜んでいます。なぜ、シンブンシがこんなことをしているのか。その動機も切ない。彼が向かう先も切ない。どうしてこんな状況にならなければいけないのか、という不条理さに共感できる切ないヒューマンドラマ要素もしっかり感じます。
・原作にあるのかないのかは不明ですが、とても刺さった台詞があります。
「それが誰かのためになるなら、どんな小さなことでも人は動く」
・これは作中である人物が起こした行動の動機として語られている言葉なのですが、現在の世の中を風刺しつつも、希望のある台詞に聞こえました。対面で人と接する機会が少なくなり、物理的な「孤独」が増える中だからこそ、「誰かのためになら動ける」という動機を多くの方が秘め持っているのではないかと思います。それが、善悪関係なく、この映画で発生している小さな出来事のきっかけにもなっているし、逆にそれをみんながよい意味でこれからに利用していけば明るい未来すら築くことができる。ポジティブにもネガティブにも利用できる真理をついている台詞のように思いました。
[映像]
・敢えて手振れ感のあるカットが多いのが、よりリアリティを感じて好きでした。
[音楽]
・割と王道といいますか、安定感のあるBGMや効果音だったと思います。踏切のカンカンカンと映像と溶け込ますモンタージュのように使ってみたり。違和感も全くなく物語を形作っていたと思います。
[演技・配役]
・生田斗真さん、すごい演技でした。第三者視点で魅せる導入時、「シンブンシ」の演技がぎこちなく見えたんですよ。ただ、彼のバックボーンがわかるとそのぎこちなさの理由がよくわかりました。ああ、これってあえてだったんだろうなって。そしてラストには滅茶苦茶カッコよくなっている。まるで最初はかわいく見えないのに、終盤では滅茶苦茶可愛く見えてくるハリウッド映画の女優のように、一本の映画の中でこちらの印象を変えてくれる演技だと思いました。
・戸田恵梨香さん演じる吉野があるシーンで「そんな(人を思いやるような)思いがあるなら(あなたもまずは自分に対して)助けを求めればいいでしょ!」と叫ぶのですが、そうは叫んだもののでもそれができない現実もあると理解している自身に矛盾を感じながらそう叫ぶしかない行き場のないモヤモヤ、を戸田恵梨香さんの「間」から感じました。そしてそのモヤモヤを振り払うかのように台詞を続ける。うーん、何とも言えない気持ちになりました。表現の意味の真相は定かではありませんが、そういう細かな部分も台詞ではないところで演じられているように見えてさすがだなぁと感じました。
[全体]
・私がこの映画の根底に見たものは「どうにもできない行き場のない憎悪 世の中全てに対する憎悪 でも、実は自分自身もその中の一部であるという葛藤」。それを悟ったシンブンシがかっこよすぎる。でも切ない。。。
・物語の部分でも書きましたが、考えさせられる台詞が多かった印象です。
「頑張れるだけ幸せだったんですよ、あなたは」
・これも、これまでどこかで聞いたことのある台詞なんですが、この映画で語られるからこそ、強い意志を持つよ卯に思いました。
・総じて、社会のモヤモヤとシンブンシの物語を通じて感じ取ることができる映画。でも、深入りはさせないようにできてる映画。だからこそ、客観的に「今一度、じっくり世の中を見渡してみて、そして、私自身はどう行動していくべきなのか」、ということを自然と考えさせてもらった映画に思えました。
・たまたまですが、出会えてよかった映画です。いずれ再鑑賞させていただきたいと思います。ありがとうございました。
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