劇場公開日 2015年6月6日

「貧困は自己責任?」予告犯 伊織さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5貧困は自己責任?

2016年9月3日
iPhoneアプリから投稿

予告犯でえぐり出される社会問題。

貧困とワーキングプアに陥る人々は
女刑事が言うように、本当に
「甘ったれた結果=自己責任」なのか?

家庭や環境の問題で
十分な教育を受けられなかったヒョロ。

劣悪な労働環境の中
身体を壊して仕事を辞めざるを得なかったゲイツとネカフェの店員。

カンサイとノビタには事情があったのかは分からないけど、ノビタの吃音気味なところを見ると、何かしらの精神疾患があったのかも。

そして、這い上がろうと努力しても
待ち受けるのは違法な労働と搾取。
貧困層を食い物にした、いわゆる「貧困ビジネス」によって、彼らは更に搾り取られ、追い込まれてしまう。そしてついに…

ここに描き出される現象は
本当に自己責任の結果なのか?
自己責任で片付けていいものなのか?

女刑事が言うように、
「社会のせいにするな、甘ったれるな」
というのがまさに今の一般的な世論。

「本人の問題」として片付けられるからこそ、産廃場のような貧困ビジネスや、ベンチャー企業のような労基違反の会社の存在が、「社会問題」として認知されない。
だからこそいつまで経っても改善しない。

これが純然たる事実だと思う。
「日本にも貧困がある」という現実から、
目を背けているだけで。

予告犯はいろんな見方があると思うし、
本筋とは的外れな感想を書いてしまったけど、私はこの貧困という社会問題をしっかり描いていたことを評価したい。

この映画をきっかけに貧困層の問題に興味を持つ人が出てくれれば幸いだ。

伊織