I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE : 映画評論・批評
2015年11月24日更新
2015年12月4日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
子どもも親もシルバー世代も大満足間違いなし!原作への敬意と愛に胸が熱くなる
原作のある映画作品を見る場合、ときとして原作のファンであることが鑑賞の妨げになることがある。原作への思いが強いと映画を別物ととらえることが困難になり、「違う!」という違和感が先に立ってしまいがちだからだ。
しかし、スヌーピーと「PEANUTS」のファンは心配ご無用。なぜならこの作品は原作者、チャールズ・M・シュルツの息子と孫が原案者であり、シュルツの大ファンを自認するスティーブ・マーティノが監督をしているから。3Dでリアルなモフモフ感を感じさせながら(2Dでも立体感は十分)、シュルツによるシンプルな線画の魅力をまったく損なっていないのだ! 幕開けは四角いコミックのコマに、ペンで描かれていく雪。ファンならそこに込められた原作への敬意と愛に胸が熱くなる。続く朝のシーンで各キャラクターの“らしさ”に出会えれば、なおさらだ。
もちろんただ原作を再現しただけではなく、アップデートもぬかりない。ストーリーの軸となるのは小さな赤毛の女の子に恋したチャーリー・ブラウンの大奮闘だが、そこに空想の翼を広げたスヌーピーのド派手なスカイ・アドベンチャーが差しはさまれて興奮を呼ぶ。さらにそのすき間には、個性豊かなキャラクターたちによるコマ漫画さながらのコントがぎっしりで、ニコニコ顔が止まらない。なんというバランスのよさだろう!
さすが「アイス・エイジ」のブルースカイ・スタジオだけあって、動くスヌーピーの躍動感、リズム感、表情の豊かさ、アクション俳優っぷりにコメディアンぶりは予想を遙かに上回る素晴らしさ。とくに笑い方の面白さとかわいさは悶絶ものだ。とはいえこの映画の主役はスヌーピーではなく、チャーリー・ブラウン。何をやってもうまくいかないが、けっしてあきらめない男の子だ。描かれるのは子どもたちだけの世界なのに、チャーリー・ブラウンには大人が思いっきり共感できる“人生の哲学”が詰まっている。この点でも胸アツ必至! 原作ファンも読んだことがない人も、スヌーピーのキャラクターが好きな人もそうでもない人も、子どもも親もシルバー世代も、すべての人たちが満足できること間違いなしである。
(若林ゆり)