「今を活きるアニー」ANNIE アニー cmaさんの映画レビュー(感想・評価)
今を活きるアニー
この頃、ピクサー以外の映画にも付き合えるようになった子どもと、日本語吹き替え版を観に行きました。かつて母親と観た映画を、自分の子と観に行けるようになるとは! 感慨深いものがあります。…と、観ることそのもので目的達成!という気持ちでしたが、なかなかどうしてどうして、「今(さら)なぜアニー⁈」という思いを吹き飛ばす、繰り返し観たくなる快作でした。
「Tomorrow」「きびしい人生」などおなじみのナンバーを散りばめ、NYの街を躍動的なダンスで活写する!…はもちろんのこと。何より、アニーを取り巻く大人たちのキャラクターが丁寧に描かれている点が良かったです。スタックもハニガンも、ただ金持ち、ただイジワル、ではありません。そもそも、なぜ殻に閉じこもり頑ななのか…という背景に触れられており、アニーと関わることで、人間くさいところがぽろぽろとこぼれ落ちてくるところに十分共感できました。特に、ハニガンをすぐそばで密かに見守る存在がいた…というところにはホッとさせられたり、ニコニコしたくなりました。
もちろん、軸となるアニーとスタックスのやり取りの面白さは言わずもがな。対極だったはずの距離が次第に縮まり、引き寄せ合い、互いを思うゆえの行き違いもあり…と観るものを引きつけ離しません。加えて、皆を笑顔に、幸せにするアニーに意外な弱点が…という点も、今を捉えた描写だと感じました。
それから、オリジナル版へのオマージュ。冒頭の学校のシーンでアニーの前にスピーチをする子がちりちりの赤毛でそばかすの女の子だったり、スタックスさんの髪が実は…!だったり。さりげない仕掛けにニンマリさせてもらいました。…あえて本作に難をつけるとしたら、アニーの愛犬サンディが、個性豊かな人間たちに押されて⁈少々影が薄いところ、くらいでしょうか。
ちなみに、子は「寝てる⁈」と思うくらい身じろぎもせず、最初から最後までひたすら無言で凝視。エンドロールになってやっと、「いっぱい(の人)でつくったねー」と発言していました。帰宅後は、チラシの写真を一つ一つ指差して「この人は…」「これ(このシーン)は…」と振り返り、再度堪能しています。いつかは字幕版、オリジナル版…できたら、舞台も一緒に観てみたいものです。