「史劇スペクタクルとして見るか、人間モーゼのドラマとして見るか、宗教映画として見るか」エクソダス 神と王 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
史劇スペクタクルとして見るか、人間モーゼのドラマとして見るか、宗教映画として見るか
チャールトン・ヘストン主演「十戒」でもお馴染み、旧約聖書「出エジプト記」のモーゼの物語を、リドリー・スコットが新たに映画化。
アメリカでは興行・批評共にイマイチだったが、リドリー・スコットの史劇スペクタクルならば劇場で観ずにはいられず。
(ちなみに今年最初の劇場鑑賞)
エジプト王の養子モーゼは、ヘブライ人奴隷の子である事を知る。兄弟同然に育ったラムセスに追放され、聖なる山にて神のお告げを聞き、同胞を救う為立ち上がる…。
開幕から、壮大に広がる古代エジプトの世界。
合戦シーンの迫力と臨場感は言わずもがな、エジプトを襲う10の災厄。
血に染まるナイル川、小動物の大量発生、疫病、雹、そして…。
最新VFXを駆使した描写は地獄絵図。
クライマックスの最も有名なシーンまで、スペクタクルの連続。
自身最高額の制作費を費やし、すっかり史劇映画が定着した巨匠は、今作でもまたたっぷりと魅せてくれる。
「十戒」と見比べてみるのも面白い。
最大の違いは、モーゼの描かれ方。
聖人君子のようだったモーゼを一人の人間として捉え、神のお告げやエジプトを襲う災厄に苦悩・葛藤する。
また、「十戒」では悪役で一方的な妬みだったラムセスだが、モーゼとラムセスの愛憎とでも言うべき関係がより克明に描かれている。クリスチャン・ベールとジョエル・エドガートンは共に熱演。
しかし、モーゼとラムセスに焦点を絞ったのはいいものの、その為ドラマの広がりには乏しく、モーゼの内面も「ノア」の主人公と若干被る。
この映画、史劇スペクタクルとしてならば申し分ナシ。
人間モーゼのドラマならば及第点。
宗教映画ならば、その後の歴史も含め意見も分かれそう。
この辺の歴史については人に説明出来るほど詳しく無いので触れないが、神が起こした災いについては言わずにはいられない。
ヘブライの神故400年も虐げられてきた彼らへの救いに異論は無いが、エジプト人の中にも罪も無い者も居るであろう。
神は人を慈しみ、神ほど人を殺めた存在は居ない。
一方に手を差し伸べれば、もう一方は苦しみ…神への信仰や宗教とは何と複雑な事。
史劇スペクタクルとして見るか、人間モーゼのドラマとして見るか、宗教映画として見るか。
ラストの“わが弟トニー・スコットに捧ぐ”にはジ〜ンとなった。