「これは素晴らしい、執念の撮影でしたね」6才のボクが、大人になるまで。 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
これは素晴らしい、執念の撮影でしたね
単純に映画としては特別なことが起こる訳でもなかったので、物凄く面白かったかと言うとそこまでではないのですが、見終わっての満足感は半端じゃない映画でしたね。
1人の少年、いや、1つの家族の成長記なんて別に珍しくもないですけど、12年間全て同じキャストで作られているところに価値があったと思いました。
シリーズ化で同じキャストが12年演じることはあっても、1つの作品で12年の歳月ずっと同じキャストで撮影するなんて、おそらく今までほとんど無かったのでは?
おかげでこのメイソン少年の親になったような、いや、この家族4人の親戚になってずっと見守っていたような感覚を得られて、妙に感慨深い気分に浸ることが出来ましたよ。
まあ特別なことは起こらないとは言いつつも、1つの家族の物語としては結構なことが起こってはいたでしょうか。
そもそも親が離婚した段階でスタートしてる時点で、もう既に結構なことですもんね。
また母親のパトリシア・アークエットが男を見る目が無いことから、何度も結婚離婚を繰り返しているのがホント子供にとっては気の毒で・・・。
しかも問題のある義父ばかりで、普通ならグレてもおかしくない、そんなハラハラ感もありつつでしたから、本当に自分が親戚になったように心配させられた分、メイソンが大人になった際の満足感は半端じゃなかったなぁと。
またメイソンと姉のサマンサが、いい感じで年を重ねるんですよね。
可愛かった子供達が、ちょっと見た目にも分かる反抗期を挟みつつ、進路や恋に悩みながら大人になっていく、その様は同じ俳優が12年間演じたからこそ得られる感慨深さ、特殊メイクやCG処理で作ることも出来たでしょうが、それではこの感覚は得られない、まさにリチャード・リンクレイター監督の執念に、この映画の凄さを垣間見た気がしました。
個人的にはイケメンなメイソンとは逆にサマンサが年々アレ方面(ブサイ○)に行きかけているのにかなり心配したのですが、大人になった彼女を見て物凄くホッとしました・・・。
離れて暮らすイーサン・ホークが演じた父親との交流も、何気にこの映画のほっこりポイントでしたね。
ちょっとキツメでいつも一生懸命な母親と違う空間を体験できるこの時間あったことが、彼ら姉弟にはむしろ良かったのではないかなと思いましたよ。
12年経ってもあまり老けないイーサン・ホーク、12年の歳月を感じさせたパトリシア・アークエット、対照的な2人の姿もとても印象的でした。
まあいろいろあっても、愛情を持って育てた子にはきっと思いは伝わるはず、そんな風に思わせてくれるような、何とも素敵な作品でしたねぇ。