イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所のレビュー・感想・評価
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おそらく本作がこの秋一番感動するヒューマンドラマだと思います。
おそらく本作がこの秋一番感動するヒューマンドラマだと思います。なんといっても主演のクロエ・グレース・モレッツが可憐で美しい(^^ゞまだ『キック・アス』第一作に出演していたころのあどけなさと、ラブシーンで見せる大人の女としての表情の両方が際立つ天性の女優だと思います。
彼女李繊細で等身大な演技が、この物語のテーマを一層引き立てたのでした。
そんなクロエが演じる 17歳の少女ミアが臨死体験ののち、どんな人生選択をするのかが描かれるのが本作です。
ミアは、プロのロックグループだった音楽好きの父と母、そして幼い弟の4人家族で幸せに暮らしていました。両親の血をひいてミアも小さいときからチェロの演奏に取り組み、めきめきと腕前を上げていたのです。その才能は、音楽の名門ジュリアード音楽院入学のための実技試験受講資格という凄い難関をパスしたほど。
そんなミアの練習での演奏を聴いていた、同級生でプロデビューもしていたロックシンガーのアダムは、一目惚れ。学校一番のイケメンからの告白に、ミアも有頂天になった思いでした。
ところが、ふたりが交際し始めて、はや丸一年がたったある日。突如ミアの幸福は音を立てて崩れてしまいます。雪道を走っていたミア一家が乗った車は交通事故に遭うのです。気がつくと、事故現場には救急隊が到着しており、重体の女性に人が群がっています。 それはミアの母親でした。気がついたミアは、母親を乗せた救急車に飛び乗ります。病院に到着したミアは、スタッフに家族の安否を尋ねても誰も答えてくれません。不思議なのは、病院のなかでミアは自由に動き回れるのです。緊急手術中の弟の手術室にも誰にも咎められずに立ち入ることができたのです。どうしてだろう?と思っていたら、昏睡状態で意識不明の自分自身の姿を、今まで動き回っていたミアが見つめるシーンを見て納得できました。事故後に動き回ったミアは、臨死のなかで彷徨っていたミアの魂だったのです。
そうした病院のシーンと、家族や恋人との思い出が交互に綴られていきます。アダムとの間も最初はラブラブでしたが、アダムがミュージシャンとして人気が出てくると、地方のライブが多くなり、次第に疎遠になってしまうのです。それでもミアを愛するアダムは、高校卒業後に一緒に住まないかと提案します。ミアも一端は承諾するものの、皮肉なことに、諦めていたジュリアード音楽院の実技試験受講資格を手にしてしまうのです。チェロ奏者になることが夢だったミアは、ジュリアード音楽院進学を諦めきれませんでした。しかし、そのためには遠く離れたニューヨークに寄宿せねばならずに、同居の約束を交わしたアダムを裏切ることになってしまいます。
ジュリアードからの通知を見てしまったアダムは激高し、ミアを置き去りにして地方ライブの旅に出てしまうのです。
アダムを失って傷心だったミアなのに追い打ちをかけるように、ミアの魂は辛い現実に次々直面させられます。母が死に、父も息絶え、快方に向かっていた弟までもが様態が急変して帰らぬ人になってしまったのです。もはや家族のなかで生死をかけて戦っていたのはミアだけになっていたのです。そんな彼女を看病していた祖父は「辛いなら、戻って来なくてもいい」と涙ながらに語りかけるシーンに、思わずもらい泣きしてしまいました。意識が戻ってきても、どこにもミアの居場所(タイトルの「イフ・アイ・ステイ」の意味どうり)なんてなくなっていて、悲しい現実しか残っていなかったのです。
でも祖父は、死んだ息子が孫のミアに託した希望を語りかけます。クラッシックなんてさっぱり分からなかった父親が、どんな気持ちで、ある日すぱっと自らのロックバンドを解散して、同時にミアに高価なチェロを買い与えたのか。その購入資金をどうやってやり繰りしたのか。父親の本心が明かれるとき、試写会場でかかすすり泣く音がこだましました。
どんなに辛い現実に直面しようとも、生きていさえいれば、新たな希望を掴むこともでききるし、自分がいる居場所は掴んでいくものだと勇気を与えてくれる作品となりました。臨死体験を子供の頃にしたことがある自分にとって、この作品は人ごとに思えません。 臨死体験研究の第一人者レイモンド・ムーディー氏によれば、アメリカの医療界で臨死体験は認められつつあるといいます。本作は、そうした体験談がベースになっていることが伺えました。「生きる意味」や「魂」について考えさせられことでしょう。
クラッシックファンには、ミアがチェロを演奏するシーンが度々登場するので、チェロ独奏曲や弦楽四重奏曲の名演奏に劇中触れられることも魅力です。
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