「行き着く先の戦争」野火 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
行き着く先の戦争
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大局的でもなく、民衆目線でもない、でもこれも確かに戦争のひとつの形。
ハッキリ言って、分かりづらい部分も多い。
暗い画面や目茶苦茶に揺れるカメラ、聞き取りにくい台詞。
登場人物ほとんどが同じ軍服のため、見分けるのが大変。
大きな転換でも一連シーンでも、カットの繋ぎが上手くない。
劇中での説明が少ないので、場所や戦況などの知識が求められる。
画面から暑さが伝わりづらいのも惜しい。
しかしそれでも、迫るものがある。
グロ目の死体も出てくるが、それ以上に自然との対比が目に刺さる。
密林の鮮やかな緑の中を歩く汚い軍服は、画面のバランスとしては違和感を覚えるほど。
度々差し込まれる美しい空や雲も、状況に全くそぐわない。
でも実際にこうなんだろう。
人間の営みの如何に醜いかが、こんなにも分かり易く表現されているとは。
内容は物語というより、戦場という地獄を彷徨う様をひたすらに映す。
一部は夢や幻覚の可能性もあるが、どれも起こり得ること。
結局追い込まれてしまえば、国の戦争より個人の戦争になってしまうのはあまりに滑稽だ。
敵側の野戦病院に救われ帰還を果たすのも皮肉。
世界平和のような綺麗事ではなく、「こうなりたくないでしょ」と、“個”に訴える戦争映画でした。
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