劇場公開日 2014年11月8日

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「サワとワケありジジイたち」0.5ミリ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5サワとワケありジジイたち

2015年5月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

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報知映画賞作品賞・助演男優賞(津川雅彦)、キネマ旬報ベストテン日本映画第2位及び主演女優賞(安藤サクラ)などなど2014年度の国内映画賞を席巻。
監督・安藤桃子&主演・安藤サクラの姉妹コンビ作は、何とも不思議な味わい深さ!

派遣先の思わぬ事故で家も仕事も金も失った介護ヘルパーのサワ。ひょんな事から彼女が考えたのは…
町で見つけたワケあり老人たちの家に住み込む押しかけヘルパー!

この“押しかけヘルパー”というのが面白い。
ハッキリ言ってやってる事は犯罪スレスレ(笑)
老人たちの弱みを握り(ゆすり?)、勝手に家に住み始め(不法侵入?)、買い物もお金を出して貰う(たかり?)。
図々しく、厚かましく、迷惑この上ない。
だけど、ヘルパーとしての腕は申し分なく、料理も上手、気配り上手。特に給料を要求するでもなく、衣食住さえ与えればOK。
異色ヒロインが見てて痛快!

映画のきっかけは、監督がヘルパーしてた時の経験。
勿論押しかけヘルパーではないが、老人たちそれぞれの悲喜こもごもはそこから来てるのだろう。
介護、老い、死…。
安藤桃子の演出は、ヘビーになりがちなこれらの題材を一貫してシビアなユーモアで描き、感傷的にもせず、しみじみとした後味と余韻を残させる。
196分の長尺は身構えるが、退屈しない。

さすがはお姉様、妹の愛らしい面をよく分かってるようで、今作の安藤サクラはいつにも増して魅力的。
お世辞にも美人じゃなく、ブちゅ役も多い彼女だが、やはり女優は、ただ可愛いとか綺麗とかだけじゃなく、演技で魅せてなんぼ。そういった意味では、安藤サクラは紛れもなく“美女”だ。
また、一癖も二癖もある老優たちを相手に堂々と渡り合う事が出来たのは同世代屈指の個性派である彼女だからこそであり、他の女優だったら完全に食われていただろう。

サワが世話した老人は実質5人。
その内時間を割いて描かれるターゲット…いやいや、エピソードは3名。
ベテランたちの名演もそれぞれのエピソードも、甲乙付け難い!

まず、徘徊悪戯老人・茂。
演じるのは、坂田利夫。
あのアホの坂田が、役者・坂田として、何処か哀しいユーモアを滲ませる名演!

次に、元教師の義男。通称“先生”。認知症を患う妻へのストレスから万引きを繰り返す。
演じるのは、津川雅彦。
映画は最近ちょい役が多いが、ここまでガッツリ演技を魅せるのは久し振りな気がする。
戦争について語るシーンはまるでドキュメンタリーのワンシーンのようで、引き込まれてしまう。

最後は、柄本明。(義理の親子共演)
冒頭、事故が起きた派遣先の家の“少年”の父で、“少年”に暴力を振るう。
このエピソードだけ毛色が変わっており、“少年”の素性には「イニシエーション・ラブ」もびっくり!?

素性も押しかけヘルパーを始めた動機も明確に説明されず。
最初は鬱陶しいのに、いつしかサワの存在は必要不可欠になっていく。
彼女が居るのは、時が来るまで。
突然現れて、不思議な幸せを置いて…。

近大