誰よりも狙われた男のレビュー・感想・評価
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最後にまさかの展開! あとはスパイ映画の割には地味だった。
ハンブルグを舞台にいくつかの諜報機関が手柄を先取りするスパイ映画と言う初めての展開の映画だった。ピストルなどでのドンパチが無い地味な映画でしたが、「こう言うスパイ映画も時にはありかな」と思いました。主人公のフィリップ・シーモア・ホフマンがかっこよくないところが、却(かえ)ってよかったかも。ヘビースモーカーで、だらしなかったし。仕事はちゃんとしますけど。
一つ、指摘すると他の諜報機関、例えば、ドイツの諜報機関やCIAなどは普通は協力しません。例えば、CIAのみで作戦を遂行することを「ユニラテラル・オペレーション」と言います。これに対して、CIAと他の諜報機関が協力して作戦を行うことを「バイラテラル・オペレーション」と言います。「バイラテラル・オペレーション」はできるだけ避けなければならないとされています。理由は、友好的な諜報機関は存在しないと言うことです。また、協力すると言うことは、自分の手の内を相手に明かさなければならないことを意味するからです。
これを考えると、最後に主人公がCIAにトンビに油揚げをさらわれたのは必然だったのかも知れません。
男くさい
すみません、何日にも分けて、間を空けて見てしまいました。
非常に渋い、おっさん主人公。
演出も進行も地味。だからこそ、スパイ物に現実味が出る。
それが全てだと思いました。
スピルバーグのようなエンタメ性はないです。それが良いのです。
ラスト。そんなことで幕を閉じる。
その渋さと報われなさが良いですね。
“誰よりも狙われた男”
フィリップ・シーモア・ホフマンが渋くてなんだか惹かれるキャラクター。
イッサやアブドゥル博士など、協力者のこともちゃんと考えている。だからこそそこに付け入る隙があったのかも。
“誰よりも狙われた男”は彼だったということか。
トンビにアブラゲ
舞台はハンブルク、ここで実際に9.11のテロ計画が練られたとクレジット、イスラム過激派には各国の諜報機関も目を光らせているわけだ。
実際に英国のMI6だった経験を持つジョン・ル・カレ原作だから実に渋い内幕ものになっている。従って、派手なスパイ・アクション映画ではありませんからご注意を・・。
主人公ギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)はドイツ連邦憲法擁護庁外資買収課のベテラン捜査官。
諜報大国ドイツには海外担当の連邦情報局、国内の連邦憲法擁護庁、連邦軍の軍事保安局の3つの諜報機関が存在する、連邦憲法擁護庁は主にネオナチ、テロリストなどの監視に当たるために設立された組織。
バッハマンはテロリストへの資金の流れを追うのが主務なのだが苦心のおとり捜査であと一歩というところでトンビならぬCIAにアブラゲをさらわれる。
映画の殆どはおとり捜査の餌準備、何かと絡んでくる他局や海外の諜報機関の連中という伏線はあるもののこの結末、さんざん主人公に感情移入させておいてこの落胆は無いでしょう。
まあ、人道主義など甘いのが命取り、スパイの世界は敵も味方も騙し合いという現実でした。
フィリップシーモアホフマンを堪能
こんなに悔しくて、やるせないラストなんて!
ホフマンのファーーーックク!!!
の叫びが!本当悔しい!
CIAが、アメリカがめっちゃ嫌いになりそうなラストですねこれは笑笑
このでしゃばり野郎ども!って叫びたくなる!
ホフマン演じる対テロドイツ諜報員バッハマンは頭が切れて仕事のできる男だけど嫌われてる。
ホフマンって嫌われ役をやらせたら世界一だね。
汚い手を使うこともあるかもしれないけど、この物語のどの組織より、人道的に描かれていた。
本当に世の中のCIAみたいな組織は、こんなに冷酷で汚いやり方ばかりなのかな。そうだとしたら本当に嫌だな。
なんてこと、真剣に考えてしまうくらい、重厚でリアリティのある作品でした。
あと、一つ一つの映像がとてもきれいで丁寧でした。
こういうセンスのいい映像って作品のジャンル問わず、癒されるなー。
ホフマンが銀杏の木が生い茂る公園にたたずむシーンとか、お気に入りだな。
本当に、もうこの方の作品が観れないかと思うとさみしいですね。
残るのは…
根こそぎ刈り取られる様はなんとも言い難いです。自分は何も得られず、他人が美味い蜜を啜るのですから。何より信じじてくれた人への申し訳なさ…
虚しさと心に残るダメージだけ…。その穴埋めは自分の信念を変えない限りはできないのでしょうか。
いい人ほど痛い目にあうことも多いということなのでしょう…
面白い映画でした!
ハンブルグで諜報活動を行なっている熟練のスパイ、ギュンターはトルコ...
ハンブルグで諜報活動を行なっている熟練のスパイ、ギュンターはトルコから密入国したチェチェン人青年イッサの存在を察知。彼はイスラム過激派の要注意人物として国際指名手配されていてCIAも動き始めるが、彼が人権団体の弁護士を通じてある銀行家に接触しようとしていることを知ったギュンターは敢えて彼を泳がせて、自分が追い続けている人物へ接触させるべく利用しようとする。
曇天のハンブルグでイッサを巡って対立する組織と彼らに翻弄される善良な人々が織りなす重たいドラマが印象的で、銃声の1つもない地味なスパイ映画ですが主要な登場人物の胸の内にある願いが”平和”であるというどうしようもない皮肉に被さるトム・ウェイツの歌声が強烈なコントラストを残す傑作。残念ながら本作が遺作となってしまったフィリップ・シーモア・ホフマンの終始憂いを纏った佇まいに胸が熱くなります。
誰よりも惜しい俳優。
原作も秀逸なのだろうが(未読)、映画も主演俳優も秀逸。
ヒタヒタと緊張感が増す中、報われないラストが切なく残る。
J・ル・カレ作品の中では「裏切りのサーカス」より観易かった。
それにしてもP・S・ホフマンこれが最後の主演作品だったのか。
あーもったいない、そんな言葉しか出ないほど素晴らしい演技。
今作の完成を観ることなく逝ってしまったそうだが、何とか公開
にこぎ着けたこと自体が喜ばしい。それ程今作の演技は重厚だ。
タイトルの狙われた男とは果たして誰のことだろうと初めから
考えていたが、なるほど…やはりしてやられたか。酷いものだと
身につまされる。冷徹に見せても実は温情派、地位や栄光よりも
さらに大物を挙げるべく邁進するテロ対策チームの仕事人間だが、
そんな風にデキる男ほど狙われるに決まっている。彼の獲物には
CIAや人権団体まで絡んでこれは難しいぞと思う中、卓越した
手捌きで協力させては任務を遂行していくバッハマンだったが…。
レイチェル、ロビン、ウィレムと豪華競演陣の演技も素晴らしく、
誰が死んだわけでもないのに背筋がゾッとするシーンが多数ある。
そもそも国際指名手配のテロリストを匿う⇔泳がせるなんていう
ことができるんだろうか。しかもあんな目立つイケメンで真面目、
遺産も要らないなんてホントかよ?と思うくらい脱テロリスト系。
これで観客に共感度を増そうって作戦だな、なんて訝りながらも
まさかのラストで「あーっ!」となる。バッハマンが大声で喚く姿
が実に切ない。シャラっと車に乗り込む女のまぁ憎たらしいこと!
「東ベルリンから来た女」のN・ホスが忠実な女部下を見事に体現し、
取調室や車載カメラの寒々としたハンブルクの風景も身に沁みる。
(この頃のホフマンは更に太ってて、走るのがかなりキツそう~)
rip
派手さや深い心理描写はなく、登場人物の説明もそこそこなので、どこに感情移入するかというのは難しい作品ではあったが、だからこそなのか緊張感が凄かった。
誰が裏切るんだろう、誰がどこでキレるんだろうとそればかり考えて視聴してたら、案外そこは大波乱はなく無難な線だったけど(笑)、それが逆に緊迫感と、作戦成功後の爽快感、ラストの無情さを増幅させる上手い流れだった。
それにしても悔しい。
見終わった後に悔しいという感情が一番浮かんできた。
続編があっても面白い締めかただったと思うし、それが見たい出来の良さで、フィリップ・ホフマンの死が本当に悔しい。
改めて、追悼の意を表したい。
フレームアウト
ハンブルクを舞台に、ドイツ右派・左派・米国が入り乱れる諜報戦を描いた本作。ジョン・ル・カレ原作。他のル・カレ作品同様に、息詰る諜報戦もさることながら、個人の心情が際立つドラマだった。
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P.S.ホフマン演じる諜報員が、辞めたがっている工作員の青年に、「I need you」と言って引き止めるシーンが印象的だった。
誰もが誰かに「必要」とされたがっている。
自分のやっていることが、役に立っていると思い込みたい。
諜報員は、その気持ちを利用して、様々な人を寝返らす。
「あなたの協力が、彼(彼女)を救うには必要なんです。」
この言葉で、銀行家、人権派弁護士らは、諜報員側に寝返っていく。
諜報員がやっていることは、より大物を釣るための餌となる人物を確保することで、その言葉には嘘がある。銀行家も弁護士も密入国者も餌に過ぎない。
諜報員は多くの嘘をついてきたにもかかわらず、彼自身が一番、その嘘を信じたがっているように見える。自分のやっていることが、誰かの為になっている、世界を良くするものと、信じたい。
この映画の結末は、諜報員が信じたかったもの全てを、壊してしまう。
いや、最初から、「諜報員が信じたかった世界」など無かったのだ、そのことを、まざまざと見せつけて終わる。
ラスト、「信じたかったもの」の消失とともに、P.S.ホフマンが、画面からフレームアウトする。
なんと無常なフレームアウト。
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ジョン・ル・カレの原作を読んだ時、大変面白かったが、彼の黄金期は60~70年代で、それらの作品群に比べたら、いささか物足りないと、個人的には感じた。
が、この映画のラスト、ホフマンのフレームアウトを観た時に、これが、ルカレが描こうとした「現代の無常」だったのかと、気付かされた。
本作のホフマンは、ルカレ以上にルカレの無常を体現していたのではないか。
ルカレは、ホフマンに対し、「We shall wait a long time for another Philip.」と、最大限の賛辞と哀惜を表している。
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本作は、ホフマンの映画と言って過言はないが、その分、割を食ったのが、銀行家役W.デフォーと弁護士役R.マクアダムスだろうか。原作で描かれているエピソードも大幅に削られている。出番が少なかった中で、二人とも健闘していると思う。
デフォーが弁護士から「あなたを信用している」と言われて、協力を決意するシーンがある。デフォーが演じると美人弁護士と懇ろになりたいという下心が見えてちょっとイヤらしい感じもしたが、誰かから信用されたがっている男の孤独がよく出ていたと思う。この映画は「trust」に過剰反応する孤独な人たちの話なんだなあと思った。(このシーンのあとも「trust」という言葉は何度も出てくる。)
弁護士役マクアダムスは、この映画には甘すぎる容姿で観ていてイライラしたが、理想を追うばかりで実は何の覚悟も出来ていなかった甘い若者という役ドコロには、結果的に合っていたと思う。
その他ロビン・ライト、ニーナ・ホスなど女優陣も良かった。
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追記:舞台となったハンブルクに関して
ル・カレ自身が諜報機関MI6に所属してた頃(1950年代)の赴任地、ハンブルク。当時は、東西の壁があり、ソ連vs欧米で対立国がはっきりしていた。
現在はどうか。国vs国という明確な対立は本作では描かれない。対国家というよりも対テロリズム。国境で敵・味方が分別できた頃と違って、誰が敵なのか選別すら難しくなっている。
ハンブルクは、アメリカ同時多発テロの実行犯アタが、留学・就労していた街であり、彼がイスラム過激派として先鋭化していった場所でもある(アタは故郷ではノンポリの普通の人だった)。
そういった背景をもとに、本作では、欧米の紕い(ドイツ右派・左派・米国それぞれで作戦に差異があり、どのチョイスが正しいのか、誰にも解らない)を、描きたかったのかもしれない。テロ後の「欧米の混迷」を主眼として観ると、いささか甘い描写もあり、現状はもっと酷ではと思う所もあったけれども。
地味だった
リアリズムに徹する表現は好きなんだけど、あまりに地味で眠くなる。人が歩いたり車で移動して誰かと会って話をする、それだけでほとんどの場面が構成されている。地味すぎて、うっかりしていると雑念に集中してしまい話についていけなくなる。
女弁護士を拉致する場面、その後監禁する場面、女弁護士とイスラムの男が尾行を撒く場面、盗聴や盗撮する場面などなどは地味ながらもとてもスリリングだった。
スパイチームが達成するポイントが、金の振込先を特定するところで、そんな地味なところを見せ場にするのはとてもセンスを感じた。盗撮カメラが何台もありすぎて、見つかるのではないかと心配だった。
フィリップ・シーモア・ホフマンがこの後亡くなってしまうのだが、そう思って見ると体調があまりよくなさそうだった。太りすぎているし、顔色も白すぎる。走る場面は倒れるんじゃないかとハラハラした。「ファーーーーーック」と叫ぶ場面はかっこよかった。デブのおじさんなのに、色気があってかっこよかった。
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