劇場公開日 2015年6月27日

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「期待値を遥かに上回る」きみはいい子 えらさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0期待値を遥かに上回る

2015年6月30日
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呉美保監督の前作『そこのみにて光輝く』は去年のマイベストでした。否が応でも上がる期待値を「前作超えはないだろ…」と抑えつつ劇場に向かった結果…

いきなり個人的なことで申し訳ないのですが、恥ずかしながら、いい歳した男が訳わからないぐらい号泣してしまいました。終わった後も席から立てず、劇場を出てもしばらく泣き続けててなんじゃこりゃっていう。私決して涙脆い方ではないのですが。ある人物がある児童の存在を当たり前のように肯定する当たり前のようなシーン、他の映画ならなんてことないシーンなのだと思いますが、ここでやられました。派手な演出や演技、シチュエーションではないのにどうしてここまで感動したのか、自分でも掴みかねています。

それ以降はもう涙が止まるシーンがなかったです!呉美保監督は鬼!

「(ざっくり)愛」「暴力を振るう者の目線」といったテーマややろうとしていることは同監督の前作から引き継がれている部分が大きいような気がしますが、異なるのはしっかり解決策、そしてその先の希望を見せてくれているところかなと(『そこのみにて~』もラストに希望がないわけではないんですが)。まあ、頭で考えれば解決策と言うにはあまりに甘過ぎるかもしれません。

それは言ってみれば綺麗事かもしれないんですけど。でも僕は綺麗事を信じられる、信じたくなるところに映画に限らずフィクションの醍醐味があると思うので、その点で言っても本当に素晴らしい作品。

また、「愛」なんて口にすれば胡散臭い言葉をあらん限りの演出と演技でまさしく体現している稀有で映画的な一本だと思います。普遍的なテーマだからこそ多くの人に見て欲しい。

そこで大きな役割を担っているのは『そこにみにて~』から続投の池脇千鶴さんと高橋和也さん。そして富田靖子さん。特に池脇さんは途中まで遠目のショットが多かったのもあって全く気付きませんでした。高橋和也さんもあの土建屋の社長と同じ人に見えない…。

僕は今まさに子どもと大人の過渡期的な年齢にあります。だからこそ余計に、一切の台詞のないラストシーンから監督の「お前はこれからどうする?」という強いメッセージを感じました。人生をかけた宿題を出された感じですね笑 今劇場でこの作品を観られたことは今後の人生において大きいとはっきり思います。呉美保監督のフィルモグラフィーを追いかけながら答え合わせしていこうかなと思います。

えら