「死せる夫とただ虚無空間を彷徨う妻の話」岸辺の旅 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
死せる夫とただ虚無空間を彷徨う妻の話
またまた黒沢清お得意の怪談ものかぁ。
でも、今回は、いわば「死んだ夫に連れられての道行の旅」、もしくは「道行からの帰還の旅」のいずれかだろう。
ならば、さしずめ、妻と夫の間でのドラマが展開されるのではありますまいか・・・
といった予想は、巻頭10分ぐらいで裏切られる。
不在の3年間の埋めるドラマが何処にもない。
もう、ひたすら虚無空間を彷徨う旅が続く。
黄泉との境を夫婦で旅するハナシなのかぁ。
死んだひとが、生きているひとに混じって、何気なく生活をしている。
それを誰も疑わない。
あの世とこの世の区別がない世界観は面白いが、なにせドラマとしての対立軸もなければ葛藤がなく、映画が進んでいく。
なんだか、こんなヘンな映画観たような気がする・・・
思い出すと、フランス人監督が阪神淡路大震災をモチーフに死者の魂を描いた『メモリーズ・コーナー』の希薄感を思い出した。
この映画もフランスの資本が入っているもよう。
うーむ、黒沢清監督も阿(おもね)っちゃったのかしらん。
それとも、ここへきて、ドラマを構成できない弱点が露呈しちゃったのかしらん。
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