「【無為な生活を送る三十路女性が《小さなきっかけ》で”精一杯生きて、勝つ!”と決意し、実行する姿に勇気を貰った作品。】」百円の恋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【無為な生活を送る三十路女性が《小さなきっかけ》で”精一杯生きて、勝つ!”と決意し、実行する姿に勇気を貰った作品。】
■今作の魅力
・傑作と呼ばれるボクシング映画の多くは主人公が”何かを背負って”戦いに挑み、そして、最終的には勝利する” と言う”王道パターン”が万民の心を捉えるからだと思っている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
が、今作の主人公”いちこ 32歳”(安藤サクラ)は”何かを背負っている”訳ではない。
<未観賞の方は以下ネタバレあります。>
◆”いちこ”がボクシングを始めた《小さなきっかけ》
・妹(早織)が幼子を抱え、実家に戻って来たために起こった些細な揉め事がきっかけで”初めて”実家を出る事に・・。
・隣にはボクシングジムがあり、ボクサー”バナナマン”狩野(新井浩文:矢張り良い役者である。きちんと罪を償い、スクリーンに戻ってくる日を待っている・・。)に惚れ、同居。
・”100円ショップで働く”こうなっちゃいけない人々”&”廃棄焼うどんおばさん”(根岸季衣)との不思議な交流。
・”男なら豆腐、女ならなお豆腐”という絶妙な登り旗を掲げて、リヤカーで豆腐を売るお姉さんに狩野が走ってしまい、再会した時の”一生懸命な奴って、苦手なんだわ・・。”という言葉を聞き・・。
ー 足立紳さんの脚本が、素晴らしいのである。
(勿論、俳優さんも素晴らしいのだが・・)ー
■そして、”いちこ”は覚悟を決め、試合に臨んでいく。
ーここからの”高揚感”は実に素晴らしい。
そして、イチコを演じる安藤サクラさんの独壇場になっていく。(脳内ではイチコ=安藤サクラ状態である。)
モシャモシャの髪の毛を自分で切り、シェイプアップされた身体とシャープな数々の動きに魅入られる。
凄い勢いで、ドンドン画面に引き込まれる・・。ー
<試合後、相手の所によろよろと歩みより、肩を抱き、”ありがとう・・、ありがとう・・”と何度も口にするシーンと、その光景を見つめる様々な年齢の女性観客たちの顔も良い。(勇気、もらうよなあ・・)
泣きながら、”勝ちたかったよ・・”と何度も繰り返す”いちこ”に狩野は”最高だからなあ、勝利の味っていうのは・・・”と声を掛けながら、二人で体育館の階段を下りていくシーンもじんわりと良い。
”邦画ボクシング映画の金字塔”の一本だと、思います。>