「書くことで。」夫婦フーフー日記 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
書くことで。
ご主人のブログを元に書籍化TVドラマ化そして映画化である。
私は原作をまったく知らなかったので、映画で初観となった。
観る人によって賛否が分かれそうな描かれ方になっているが、
コメディとはいえこれは立派な闘病記になっていると思った。
こういった現実が起こらないとは絶対いえないのだ。つまり…
結婚して出産してさぁこれから育児!という時に相方が急死。
幾ら福祉が充実した日本といっても片親には辛い現実が沢山。
まずは生活。今作ではヨメが他界してしまうので、遺される
のはダンナの方になるが、乳飲み子である子供の育児と仕事の
両立は普通の会社員(今でなら産休がとれるのかもしれないが)
にはまず難しい。双方の親がまだ元気で面倒をみてくれたこと
が何よりもまず大きいと感じた。これが中高年では親の介護と
重なってしまう。仕事と育児と介護…あり得ないことは、ない。
17年も付き合ってやっと結婚したのもつかの間、妊娠とともに
妻のがんが発覚する。それも末期。ご本人も家族もどれほどに
辛かっただろう。無事に出産を終えるも一年足らずで奥さんは
亡くなってしまう。日々の詳細をブログ日記で旦那さんが綴り、
やがて書籍化されるのだが、私はとある編集者がその内容に
対し「この本のウリって、なんなの?」と聞いた一節にグサリ。
ただの闘病記なんて誰も読みたがらない。じゃあどうするか。
死んだヨメがダンナのもとに現れる。という設定が映画のウリ
だとすれば、それにより楽しかった日々と闘病の日々が二人で
観客と共に振り返れる。この脚本にそんな空想を浮かべていた。
蔵之介と永作の丁々発止のやりとりは楽しいし、幸せな場面を
二人で辿る光景には涙も溢れる。死は免れない現実と重なるが、
「それを書くことで救われていたんだよね」とは、全くその通り。
笑って生きろ!というヨメからの応援が随所で聞こえる。
(喪失を乗り越える方法は人其々。カエルの置物も可愛かったな)