ベイマックス : 映画評論・批評
2014年12月16日更新
2014年12月20日よりTOHOシネマズ日本橋ほかにてロードショー
男の子のための「アナと雪の女王」
「アナと雪の女王」というメガヒットを生み出したウォルト・ディズニー・アニメーションの最新作として見ると、そのあまりのギャップに目眩を覚えるかもしれない。なにしろ、「ベイマックス」の原作はマーベル・コミック。実は今作は、ディズニー傘下となったマーベルとの初の本格的なコラボレーションなのだ。
マーベルの膨大なライブラリーのなかから、わざわざマイナーな「ビッグヒーロー6」を選ぶあたりが賢い。知名度が低ければ低いほど、原作ファンの批判を気にすることなしに、ディズニーは自由に解釈できる。実際、原作と共通しているのは基本設定くらいで、映画版は徹底的にディズニー化されている。マーベルのエンターテインメント性と、ディズニーの感動が見事に融合しているのだ。
「ベイマックス」の核は、少年版トニー・スタークともいうべき発明家のヒロと、最大の理解者である兄タダシとの兄弟愛だ。タダシが不慮の事故で還らぬ人となると、ヒロは兄の遺したロボット、ベイマックスと深い絆で結ばれることになる。この疑似兄弟関係があるからこそ、「ベイマックス」は、どのマーベル映画よりも深い感動を与えてくれるのだ。
「アナと雪の女王」は姉妹の物語だったからこそ、お姫様映画だった。「ベイマックス」は、兄弟の物語だから男子向けのスーパーヒーロー映画となっている。ジャンルこそ違うが、ポジティブなメッセージや、ありあまるハートは変わらない。ディズニーの快進撃はしばらく続きそうだ。
(小西未来)