「四姉妹が「家族」になるまでの1年間」海街diary しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
四姉妹が「家族」になるまでの1年間
第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作。
原作マンガは未読。
三姉妹が幼い頃、愛人をつくって家を出て行った父親。その父親の子である腹違いの妹と鎌倉で一緒に住むことになり…
そこから始まった彼女たちの暮らしを通して、家族とは何かを見つめ直していく展開がとても感動的で、秀逸でした。
腹違いの子であるすずをブレイク前夜の広瀬すずが好演していました。是枝裕和監督伝統の子役に台本を渡さないスタイルで演出され、彼女の感性に従った演技が目を惹きました。とてもナチュラルで違和感の欠片もありませんでした。
表情のひとつひとつも豊かで、なんの屈託も感じさせませんでした。完全にキャラクターを自分のものにしていて、物語の要となる重要な役にも関わらず、完璧に演じているなと思いました。ここからの快進撃は言わずもがなでしょう。
盛り上がりに欠ける、と云う指摘が出るのも当然かもしれませんが、淡々と展開されるストーリーは、どこか小津映画風味で、日常そのものを切り取っていた印象。普段の暮らしで、事件が起きることなんて、そうそう無いもの。
ありふれた日常風景を丹念に描き出すことで、人間本来の姿を炙り出していく手法が素晴らしいなと思いました。さりげない仕草や会話の端々に、細かなリアリティーの気配りがされていて、登場人物の存在が匂い立つようでした。
それに、死で始まり死で終わる物語なんだな、と…。食事のシーンが結構多いなぁ、とも…。どちらも人間にとって切り離せない要素。それを丁寧に描いたことで、より人間らしさが際立っていたのかもしれないなと思いました。
[以降の鑑賞記録]
2016/05/21:土曜プレミアム
2017/08/20:Blu-ray
2018/06/09:土曜プレミアム
※修正(2024/02/18)
私は、彼氏と家の前まできた長澤まさみが、姉の綾瀬はるかと出くわしたとき、「寮母さん」と彼氏に紹介する場面が大好きです。
原作では長澤まさみの次女と彼氏のエピソードが結構重いのですが、そこは省略されてます。
あやせの長女の不倫は、原作通りですが、広瀬すずが綾瀬に不倫で父を奪った母親のことを「ひどいよね」と綾瀬に言う場面がとても胸に来ました。映画オリジナルの脚色です。