「いいダシが出てる、滋味深い作品」海街diary SHT.さんの映画レビュー(感想・評価)
いいダシが出てる、滋味深い作品
観る前は「きれいな風景ときれいな女優さんを映している映画」ぐらいの印象しかもっていませんでした。
この美人4姉妹を観ているだけでも眼福だけど、鎌倉の豊かな生活の中で紡がれた経糸・緯糸がとてもきれいな人間模様をみせてくれ、2時間と少しのあいだ、じわじわと心が暖かくなるしあわせな時間でした。
キャスト含め画面に映っているモノすべてが美しく、まるでジブリ作品の実写化のような印象さえ受けました。
エバーグリーン、とはまさにこの作品のためにある表現でしょう。
「すず」役の広瀬すずが、わずかな思春期の間にみせるのであろう鮮やかなきらめきが端々から垣間見え、大器を予感。
そして、これまであまり彼女の作品を観ることがなかったのですが、やはり綾瀬はるかという女優さんは、まるで慈母のような微笑みをたたえ、みているだけで心を鷲づかみにされるような、綺麗というだけでは足りない凄みを感じさせられました。
そしてこの作品を創造して下さった是枝監督には、ただただ感謝、としか申し上げられません。こんなにも良作を生み出して頂き、ありがとうございます。
いわゆる映画らしいストーリーのアップダウンやドンパチを求める方にはこの作品の滋味深さは理解できないかもしれません。
淡々と描かれる日常の中に、じつは丁寧に下拵えをされたダシが効いているような、味わいと奥行きがこの作品からは伝わってくるよう。
10年後、いやむしろそれ以降にもう一度観直したとき、自分がこの作品に対しどんな風に感じるのか、今から楽しみです。
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