アルゲリッチ 私こそ、音楽!のレビュー・感想・評価
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ホームビデオ?
アルゲリッチさんは余韻を聴かせるよりは華麗なタッチで魅せるタイプのピアニストでエキゾチックな風貌とあいまって日本でもファンが多いですし、映画の中でも来日時の様子が垣間見られます。個人的にはしっとりとした演奏家の方が好みでアルゲリッチさんの熱烈なファンと言う訳ではありません。
さて本題は、主人公が稀代の名ピアニストであればホームビデオでも映画として成立するのか?ですが、微妙です。カメラマンが実の娘でも気を許す素振りは感じられず、いつも素っ気なく答えをはぐらかしてばかりです。三女のステファニーが母に買ってもらった日本製のビデオカメラで家族を撮り始めたのが作品のルーツのようです。自身も母となり、奔放な母の人生に向き合いたくなったのでしょう。
3人の娘は全て父親が違います、娘たちはアルゲリッチが引き取っていますが長女のリダ・チェンは訳ありで幼少期は施設で育てられ里親を転々としたようです。
父母ともに芸術家気質というか音楽以外には無頓着で、娘たちから見れば親の生き方に翻弄されたというのが実感でしょう。
ステファニーが戸籍上私生児のままであることを気に病み父に認知を頼むシーン、父のピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィチは大使館のミス、紙切れなどどうでもいいだろうと悪気は無いのだが娘の気持ちさえ汲み取れない様子、そんな親ってあり?
幼少期からコンクール入賞を目指して英才教育を受けてきた歪だろうか、感性が命の芸術家ともてはやされても懐疑的になりそうな子育てエピソードには失望します。
ただ、アルゲリッチのネイルサロンのエピソード、指ごとに違う色にして、左右対称はいやと言った話は娘さんならではのエピソード、如何にもと笑えます。アルゲリッチの奔放な生き方をみるとシューベルトは苦手、シューマンが一番好きというのは分かります、映画には出てきませんが第10回ショパン・ピアノコンクールでの審査員辞退騒動でクロアチアのイーヴォ・ポゴレリチを擁護したのも自由人同士の共鳴と思えてきました、そういった意味では収穫ありかも・・。
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